自らが推薦した憲法学者から「集団的自衛権は違憲」と指摘された自民党。オウンゴールを挽回しようと やっき だが、混迷はさらに深まりそうだ。
自民党はきょう全国一斉に「拉致問題の解決と安保法制」を訴える街頭宣伝を行った。
「憲法守れ」「戦争させない」・・・吉祥寺駅前にはプラカードを手にした人々が集まった。
品川区から足を運んだ女性(60代)は「改憲ビラを回収しようと思ってきた。拉致問題(の街宣)なんてウソでしょ?」と語る。
八王子から来た男性(72歳)は「少子化の時代に戦争しようなんて正気の沙汰とは思えない」と憤った。
都議会議員や国会議員の演説が始まると「憲法壊すな」「戦争反対」のシュプレヒコールが起きた。街宣車のスピーカーで拡声されているのだが、演説の声はかき消された。
拉致問題で求心力を高めようと目論む自民党議員たちにとっては思惑外れだ。憤った地元選出の都議会議員は「戦争反対は中国に(向かって)言って下さい」と声を荒げた。(荒げたので聞こえた)
谷垣幹事長が登壇するとシュプレヒコールはさらに大きくなった。筆者は話を聞き取るために街宣車に一番近い場所まで移動した。
「日本国憲法の守護者は最高裁なんです。最高裁は自衛隊は違憲ではないと言ってるんです」。
党をあずかる谷垣幹事長は火消しに懸命だ。幹事長は砂川判決を引用し「集団的自衛権は違憲ではない」ことをアピールしようとした。
砂川判決(1959年)は「集団的自衛権は違憲である」とする趣旨の東京地裁の判決を、田中耕太郎最高裁長官が米大使館から圧力をかけられてひっくり返し「合憲」としたのである。
谷垣幹事長の「砂川判決」引用は、袋小路に入った自民党の姿を象徴していた。
年配の女性は「憲法学者が集団的自衛権は違憲と証言した」新聞記事(拡大コピー)を、土屋正忠衆院議員(元武蔵野市長)の目の前に突き付けた。
土屋議員は「学者は責任がないからね、どこで戦争があるの?」と捨てゼリフを吐いた。
新宿西口にはさらに多くのカウンターが出た。100人近くはいただろう。吉祥寺の倍だ。
練馬区から参加した男性(公務員・60代)は「『憲法改正マンガ』を回収するゴミ袋を6袋持って来た」と力を込めた。
新宿西口でも谷垣幹事長がマイクを握った。「帰れ、帰れ」「ブラック政権、アベ政権」のシュプレヒコールが起きた。人数が多い分、吉祥寺よりも迫力がある。
山谷えり子国家公安委員長が登壇した。シュプレヒコールは「在特大臣帰れ」「ネトウヨやってて恥ずかしくないのか山谷」…となった。
論理は破綻し、何を言っても国民の反感を買うばかり。もはや在特レベルになり下がった政府与党の姿があった。
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