日本の恥を世界にさらすような筆禍事件が起きた。
安倍首相の政策アドバイザーだった作家の曽野綾子氏が、産経新聞(11日付け)にアパルトヘイト(人種隔離政策)をすすめるかのようなコラムを書いたのである。
労働力不足を補うために移民をもっと受け入れ、人種別に居住地区を分けよ、という内容だ。
海外メディアは大騒ぎとなった。ロイターやウォールストリートジャーナルが伝え、各国の新聞が転載した。
アパルトヘイトの撤廃を血で勝ち取った南アフリカ共和国はたまったものではない。同共和国のモハウ・ペコ駐日大使は産経新聞に抗議文を送付している。
「大手メディアがとんでもない政策を肯定するような記事を掲載してよいのか?」
有志たちが、きょう、産経新聞本社前で抗議の声をあげた(主催:憂国我道会、徹通塾)。民族派の主催だが、リベラル系左派も参加した。
千葉県から参加した男性(50歳)がトラメガを手に訴えた―
「あなた方が経団連とつるんでやっているのは新自由主義的な移民政策だ。労働力を物としか見ていない。日本の労働力が高いから、中国だ、次はベトナムだ、ミャンマーだ、となる。最後は刑務所の中の人間をタダでこき使う。すでにアメリカでやっていることだ」。
別の男性(22歳)は『田中龍作ジャーナル』のインタビューに「曽野綾子を保守の論客と紹介するのは間違い。アパルトヘイトは保守の伝統ではない」と答えた。
選挙では共産党に投票するという男性(神奈川県在住・40代会社員)は次のように話した。
「単なる機械の代わりとして入れて、自分たちとは別の所に住まわせてというのは諸々の災いになる。暴力の呼び水になる。昔のアメリカやアパルトヘイトと同じだ。21世紀にもなって・・・」。
産経新聞によれば、南アフリカ共和国の抗議文には「人道に対する犯罪。21世紀において正当化されるべきではなく、・・・肌の色やほかの分類基準によって他者を差別してはならない」と書かれてあったという。
産経新聞に問題のコラムが掲載された2月11日は、ネルソン・マンデラ氏が獄中から解放されて25周年にあたる。この日にぶつけたとは思えないが、国際社会から大ヒンシュクをかったことは確かだ。
曽野綾子氏は第2次安倍内閣で首相の私的諮問機関である教育再生実行会議のメンバーを務めた。
教育を論じる人物が人種隔離政策をすすめるかのような説を唱え、安倍首相に近い新聞社がそれを拡声する。日本の主要メディアはこれを問題視しない。レイシズムがまかり通る社会になってしまったのだろうか。