ドネツク州の州都ドネツク市周辺を制圧した親露武装勢力が次に狙うのは、戦略要衝マリウポリだ。
マリウポリから北へ60キロのボルノボハ村(人口2万3千人)は、ウクライナ軍が前線基地を置く。
戦争の実相を知るには前線を見ておかねばならない。通訳が同行を拒否したため、筆者は名うてのドライバーと2人で前線まで出かけた。
村のチェックポイントに着くと、間もなくパトロールを終えたウクライナ軍の部隊が基地に戻って来た。兵士は20人弱。1個小隊か。
兵士たちは抱き合い、最後には戦車をバックに記念写真を撮った。大戦に勝利したような熱狂だ。
パトロールを終えたくらいで何故こんなに喜んでいるのか? 部隊の小隊長と見られる兵士に「掃討作戦を行ったのか?」と聞いた。
小隊長は「分離主義者は夜動く。今は別段なにもなかったが、時々、チェックポイントで武器・弾薬が見つかる。気を抜けない」と緊張気味に語った。(※)
「分離主義者は夜動く」がすべてを言い表していた。
ドネツク州はウクライナ系とロシア系の民族比が拮抗する。半分はロシア系だ。日頃は普通の村人が、武器を手に背後から襲ってくる可能性があるのだ。ゲリラ戦である。
ロシアは多少時間をかけてでもゲリラ戦でマリウポリを陥れるつもりだ。正攻法と比べたら国際的批判は小さい。
マリウポリは黒海艦隊が基地を置くクリミア半島とこれまた海軍基地のあるオデッサに真っ直ぐつながる。
ロシアが戦略要衝のマリウポリを放っておくはずがない。
◇
(※)
小隊長は筆者のインタビューに英語で答えてくれたが、ロシア語はネイティヴだった。米軍事会社の傭兵ではないようだ。