一生、正社員になれない。結婚なんて夢のまた夢――こうした労働者があたり前になる世の中が到来しようとしている。
安倍政権は「労働者派遣法改正法案」を今国会に提出した。身の毛もよだつような恐ろしい法律だ―
これまで一業務につき3年が限度だった労働者派遣が、人さえ変えれば無期限に延長できるようにする法律だ。当然、企業はいつでも首を切れる派遣労働者を温存する。そして増やす。
〝 会社の中枢部分だけ正社員にして、あとは皆、派遣労働者に置き換えてしまうのではないか。〟労働界は危機感で一杯だ。
「こんな法律を通してはならない」。各界の労働者たちがきょう、派遣法の改悪に反対する声をあげた。
場所は人材派遣会社の代名詞とも言えるパソナ本社前(東京・大手町)だ。あの竹中平蔵氏が会長を務める会社と言った方が適切だろうか。
竹中氏は「首切り自由化」「残業代ゼロ」など安倍政権が目論む労働法制緩和の司令塔である。
印刷会社、医療法人、航空会社…あらゆる業界で使い捨てにされた労働者がマイクを握った。
場所がパソナ本社前とあって、抗議の矛先は竹中会長に集中した―
「一つ、一人2役エチゴ屋とお代官で やりたい放題」
「二つ、腹心の手下を使って審議会・委員会を攪乱」
「三つ、身勝手な税金逃れで海外に巨万の資産蓄財」
「四つ、欲にまみれた大臣・官僚をパソナ御殿で接待」
「五つ、いつでも、いつまでもハケンで格差拡大」・・・時代劇『桃太郎侍』をパロディー化して、竹中会長に当てつける口上も飛び出したほどだった。
「人の労働を食い物にする、こんな法律が通ってよいのか?」とスピーチしたのは、大日本印刷の子会社を解雇された橋場恒幸さんだ。2重の偽装請負で働かされていた橋場さんは、会社に「損害賠償」と「地位保全の確認」を求める訴訟を起こしている。
「派遣なんてものは、そもそも、あってはいけない。こんな法律が通ったら派遣は限りなく拡大してゆく」。橋場さんは怒りを押し殺すようにして語った。