「目からウロコ」とはこのことだ。原発事故をめぐってマスコミが真実を報道せず、政府がウソをつき、専門家が的外れな解説をしていることがよく分かる。元東電技術者にして医師の@onodekitaこと小野俊一氏がきのう都内で講演した。
東大工学部を卒業後、東京電力に入社した小野氏は、福島第2原発に配属された後、本店の原子力技術課(安全グループ)に勤務した。7年間の東電勤務で身をもって知ったのは、原発安全神話がデタラメで、原発の発電コストは火力・水力と比べるとズバ抜けて高いということだった。
チェルノブイリの事故後、日本の新聞と電力会社は「日本の原発には、格納容器、鉄筋コンクリートの建屋があるので、チェルノブイリのような事故は起きない」と吹聴していた。
ところが当時、東電ではシビアアクシデント対策でベント配管の増設が、検討されていたのである。いくら格納容器があっても内部の圧力が高まれば爆発する(実際、福島の事故はそうなった)。格納容器があるから放射能を環境に放出することはないというのはウソであることが分かった。事故時にはベント配管から放射能をまき散らさない限り、事故の収束は図れないのである。
原発の発電コストが他に比べて高いことは、福島の事故後、立命館大学の大島堅一教授などが明らかにした。だが、小野氏はそれより20年以上も前から知っていた。入社早々、先輩から教えられたのである。
「高いに決まってるだろ。安いはずがないだろ。そんなの当たり前だ」「放射線管理区域があるだろ。効率は悪いし、被曝はするし、一つ一つの機器も火力と比べると倍以上するんだぞ。これで安かったらおかしいよ」。
小野氏が在職中の東電社内資料によると1kwh発電するのに福島第一原発は15円を要した。火力は2~3円。(1995年頃)
事故で飛散した放射能の量は、チェルノブイリの方が、福島よりも多いとの説がある。東電や規制機関がこの説をとる。小野氏は おかしい と指摘する。
「福島は4基で出力は280万kw、チェルノブイリは1基で100万kw」というのが主な根拠だ。しかも福島の場合、3号機は使用済み核燃料プールも損傷していると見られる。稼働から40年の福島原発は、稼働わずか3年のチェルノブイリ原発よりも放射能で汚れていることも加味しなければならない。
飛散した放射能が多いほど当然、環境は汚染される。
チェルノブイリの最汚染地帯であるナロブリャ地区ドゥリャドイ村は1,850万ベクレル/㎡で、大熊町東平は3,000万ベクレル/㎡(両者ともセシウム137)。大地も福島の方がはるかに汚染されているのだ。
「外部被ばくと内部被ばくは同じ」とする御用学者もいる。だが小野氏は「ヒーターの前で体を温める(外部被ばく)のと、灼熱した石炭を食べる(内部被ばく)くらい違う」と指摘する。
マスコミがほとんど報道しない動植物の畸形についても、小野氏は福島県浪江町で見つかった「耳なしウサギ」なども写真つきで紹介した。「畸形は地震の揺れによるストレスが原因とみられる」とする御用学者の珍説も加えて。
東電技術者として原子力発電に携わった小野氏の“内部告発”は、迫力満点で、講演時間の60分はあっという間に過ぎた。医師として指摘する内部被曝の危険性は説得力に富んでいた。
小野氏は今後の見通しを次のように示す―
●人類には原子の火を止めることはできない。
●今後も再臨界を何度も起こす。
●収束方法は誰も知らない~汚染水処理施設などこの世のどこにもない~
絶望的な状況なのだが、小野氏はそれでも「あきらめたらお終い。イナゴの精神で戦い続けよう」と私たちを励ます。イナゴ(の群れ)は一匹、二匹殺しても止まらない。全部殺さなければならない。
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本稿は小野氏の講演を基に近著『フクシマの真実と内部被曝』を参考にして執筆しました。