平和裡に行われていた「10万人市民集会」は、警察の放水と催涙弾で追い散らされた――
ゲジ公園のオキュパイを続けていた「タクシム結束プラットホーム」は、前日からTwitterやFaceBookで「赤いカーネーションを持ちタクシム広場に集まるよう」呼び掛けていた。
赤いカーネーションは葬式の際、死者に手向ける花だ。機動隊との衝突で命を落とした若者たちを弔う意味が込められている。
労働組合の旗も政党の旗もない。人々は大河となって広場になだれ込んできた。最後尾が見えない。
アジア側からボスポラス海峡を船で渡って来た人々は、警察に向かって「催涙弾を撃つな」「ヘルメットと棍棒を捨てて、こちら側に加わりませんか」とシュプレヒコールを上げながら入場した。こちらも最後尾が見えない。
~佳境の集会に警察「20分以内に広場を立ち去れ」と警告~
集合時刻の22日午後7時(日本時間23日午前1時)頃、広場は人で埋め尽くされた。中に入ると身動きが取れない。それどころか息苦しい。ベテランの地元ジャーナリスト(40代・男性)は「10万人は超えている」と見る。彼は「広場にこんなに人が集まったのは初めて」と興奮気味に語った。
広場を埋め尽くした人々は、一斉にカーネーションを空に投げ上げた。無数の赤い花が宙に舞う。「ヘル イェル タクシム、ヘル イェル ディレニシユ=どこでもタクシム、どこでも抵抗」。シュプレヒコールが響く。
天を衝くような熱気はあるが、暴動に発展するようなトゲトゲしい雰囲気はない。集会がまさに佳境に達しようとしていた時だった。警察は「20分以内に広場を立ち去れ」と警告した。機動隊は隊列を固めわずかに前進する。
人々は警告に反発した。丸腰で小石ひとつ持っていないのだから。「ブ・ダハ・バシュラングチュ=始まったばかりだ」「ミュ・ジャ・デレエ・デバム=戦いは続く」。10万人が一体となった地響きのようなシュプレヒコールが、機動隊のさらなる前進を阻んだ。
それから間もなく…警告の20分は経過していなかったはずだ。警察は広場の人々に催涙性の水を浴びせ始めた。機動隊は広場中心部になだれ込み人々を排除した。
人々は濁流のごとく広場につながるストリートに逃げる。そこで態勢を立て直し再び広場に入ろうとした。機動隊が広場の入口という入口を塞いだため、ニラミ合いとなった。
ニラミ合いは30分も続かなかった。エンジン音を唸らせた放水車が催涙性の水を浴びせ、機動隊の大群が人々に襲いかかる。機動隊は放水を逃れて路地裏にいた人々まで棍棒で殴りつけた。
デモ隊の中には中高年も目立った。スカートにハイヒール姿の女性も。機動隊はこうした人たちに対しても容赦なく襲いかかった。
その日は警察が力で鎮圧する。しかし翌日になると人々は態勢を立て直し、タクシム広場に集まる。この繰り返しだ。国家が暴力で弾圧しても、人々はあの手この手で抵抗する。抵抗はエルドアン首相が辞任するまで続くだろう。