福島第一原発が爆発事故を起こしたのは安全管理を怠ったためだとして、地元住民たちが東電の旧・現経営陣と政府の役人を業務上過失致死傷の罪で検察庁に刑事告訴して、ほぼ1年が経つ。(2012年6月11日、告訴)
原告団はこの間、幾度も検察庁(東京地検、福島地検)を訪れ、東電と政府役人を起訴するよう要請してきたが、進展具合はサッパリ分からない。
いつまで待たせるのか?地検はやる気があるのか? しびれをきらす原告たちが、きょう、日比谷公園で「厳正な捜査と起訴を求める集会」を開いた。
まず、原告代理人の海渡雄一弁護士が経過を報告した。「検察庁には『東電に踏み込んで証拠を保全するよう』迫っている。福島では甲状腺に異常のある子どもが7人も見つかっている。紛れもない業務上過失傷害です」。
原告団長の武藤類子さんは次のようにスピーチした――
「市民である私たちがなぜ(東電と政府役人を)告訴しなければならかったのかをもう一度考えてみましょう。原発事故は私たちのささやかな日常を奪い、生きる権利を踏みにじった。…(中略)なぜこのような事故が引き起こされたのか? どうして被害が拡大するようなことが行われ続けているのか? 私たちは真相を究明し、一刻も早く被害を回復しなければなりません」。
福島の住民たちはバス3台を仕立てて上京してきた。郡山から乗車した女性によれば、バスの中は不安と怒りが充満していたという。「孫子と離れての淋しい暮らし」「山菜が食べられない」「昆虫や野鳥が減った」……福島の人々に共通するのは“原発事故さえなければ”の気持ちで一杯であることだ。
彼女は「あれだけの犯罪があったのに検察は何をしてるんだ?」と憤る。
ロッキード事件の捜査を指揮した故伊藤栄樹は、検事総長に就任した際(1985年)、検事たちに「巨悪は眠らせるな。被害者と共に泣け」と訓示した。「巨悪は眠らせない」で鳴らした検察庁の面影はもはやない。
都合の悪い政治家はデッチあげてでも起訴するのに、国家権力をも支配下に置く原子力村には手が出せないようだ。東電に段ボール箱を持って家宅捜索に入れば、検察庁の面目躍如なのだが。