また地下貯水槽から放射能汚染水漏れ 無間地獄の福島原発

貯水槽の断面図を描いて説明する尾野本部長代理。=7日、東電本店 写真:田中撮影=

貯水槽の断面図を描いて説明する尾野本部長代理。=7日、東電本店 写真:田中撮影=


 
 汚染水漏出の無間地獄が始まった。地下貯水槽から放射能汚染水の漏出事故があったばかりの東電福島第一原発で、今度は別の貯水槽から汚染水が漏れ出していることが分かった。さらに驚くのは、その貯水槽の汚染水を他の水槽に移さないということだ。

 新たに汚染水の漏出が見つかったのは、昨日未明に記者会見して漏出を明らかにした2号水槽に隣り合う3号水槽。

 内側は2号水槽と同じく2層のポリエチレンシートとベントナイトシートの3層構造になっている。東京電力が今朝計測したところ、ポリエチレンシートとベントナイトシートの間の放射能濃度が2,200Bq/㎤、ベントナイトシートの外側(土壌)が0・045Bq/㎤ あった。

 3号水槽はタテ56m、ヨコ45m、深さ6mで、2号水槽よりほんの一回り小さい。貯水容量は1万1,000トン。汚染水でほぼ満杯(95%)だ。

 水位の低下は見られず、土壌に漏れ出している汚染水の放射能濃度は比較的低い(東電の発表にウソがなければ)。このためタカをくくっているのだろうか。漏れ始めているのにもかかわらず、3号水槽の汚染水を他の水槽に移送することはしないそうだ。2号水槽の汚染水は、現在1号水槽と6号水槽にポンプで移送している。

 3号水槽の放射能汚染水を他の水槽に移送できないのには事情がある。現在、空いているのは小規模の5号水槽と6号水槽だけで、2基合わせても6千トンしか入らない。3号水槽にある1万トンもの汚染水は持って行く所がないのだ。

 記者団から「(3号水槽の汚染水を)移したいけど移せないのか?」と質問が飛んだ。

 尾野昌之・原子力立地本部長代理は「今の段階では何もお答えできない」「(先に漏出事故が起きた)事故2号水槽の移送に力を傾注する」とかわした。

「事故と呼ばずなぜ事象と呼ぶのか?」。厳しい追及で定評のある木野龍逸記者(手前・後ろ姿)。=写真:田中撮影=

「事故と呼ばずなぜ事象と呼ぶのか?」。厳しい追及で定評のある木野龍逸記者(手前・後ろ姿)。=写真:田中撮影=

 地下貯水槽は全部で7基あるが、7基とも同じ構造だという。ポリエチレンシートのつなぎ目から漏れていると見られている。ベントナイトシートもつなぎ目があるそうだ。

 今後、2号水槽と3号水槽以外の水槽からも放射能汚染水が土壌に漏れ出す可能性は同様にある。

    ~安普請で事故頻発、安全にコストかけない体質~

 雑誌記者が「地下貯水槽の施行費用はいくらか?」と質問すると尾野本部長代理は「個別の契約についてはお答えできない」と話した。

 筆者が続いた―「安普請だから答えられないのではないですか? カネをかけずに簡単な工事しかしていないから事故が起きるのではないですか?」と。尾野本部長代理は先の雑誌記者への答えと同じように「お答えできない」の一点張りだった。

 東電には国民の税金が何兆円もつぎ込まれている。しかも安全に関わる案件だ。国民は知る権利があるのではなかろうか。

 安全対策よりもコストカットを重視した結果、原発事故が起きた。惨劇を経験したにもかかわらず、東電の体質はまったく変わっていない。平気な顔で放射能汚染水の海洋投棄をする―そんな光景が目に浮かぶ。

  ◇
相棒の諏訪都記者は通訳で海外渡航しており、7月半ばまでお休みします。

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