私企業の集まりである記者クラブが国有財産である国会記者会館を無料独占するのは、財政法違反である。実態を検査されたい。―フリージャーナリストたちが会計検査院にきょう審査要求した。
審査要求したのは寺澤有、佐藤裕一、畠山理仁の3氏(いずれもフリージャーナリスト)。
3氏が審査要求するのは次の根拠に基づく―
●財政法第9条1項は、「国の財産は、法律に基づく場合を除く外、適正な対価なくして譲渡もしくは貸し付けてはならない」と規定している。
●国が記者クラブに国会記者会館の無償使用を承認したのは、会計検査院法第22条の2が規定する必要的検査事項にあたる。
無償貸し付けを認める場合の根拠には、昭和33年(1958年)の大蔵省通達の例外規定がある。「国の事業の遂行のため、国の当該施設(記者室)を提供する」というものである。
記者クラブは、国の政策や事業を国民に報せ、公共性の高い事業を行っているのであり、私的利益のためではないということだ。
国の事業のために提供しているのは、あくまでも「記者室」だけなのである。ところが国会記者会館の記者クラブ(国会記者会)は、会館の廊下や屋上をも占有し、「我々以外は使っちゃダメ!」と言い張っているのだ。ヤクザが縄張りを主張しているのと何ら変わらない。
【図面を提出しない記者クラブ】
3氏は首相官邸前で毎週金曜日、大々的に繰り広げられる反原発抗議行動を撮影しようと国会記者会館の屋上にあがろうとしたところ、会館事務局に妨害されたとして「取材妨害差し止め」の仮処分申請をしていた。
先月、最高裁で棄却されたのだが、この仮処分申請をめぐって国は興味深い準備書面を提出してきた。「(国会記者会館の中で)無償で使ってよい所は図面で示している」というのだ。
裁判官が記者クラブ側(弁護士)に「図面を出して下さい」と要請したが、記者クラブ側は「仮処分の中では出しません」と突っぱねたという。記者室以外の廊下や屋上をも占有できる根拠を提示できなかったのである。
記者クラブが記者室を占有する根拠さえも崩れつつある。国会記者会館を所有する衆議院は「フリーランスやネットメディアであることのみをもって、国会記者事務所(記者室)の使用適格がないとは考えておりません」と述べている(仮処分申請に対して、国が提出した準備書面)。
財務省はさらに踏み込み「(国会記者会館の)新聞記者室はフリーランスやネットメディアの記者も使用できる」(同準備書面)としている。
所有者である国の見解が示すように、記者クラブによる国会記者会館の占有は正当な根拠がないのだ。ただの「実効支配」である。
会計検査院に審査要求した代理人の山下幸夫弁護士は「(国有)財産の管理という面からこの問題をキチッと判断してもらいたい」「国会記者会(記者クラブ)が独占している異常な状況を変えてゆきたい」と話す。