生活保護費の大幅削減に「待った」をかけようと受給当事者や支援者たちがきょう、国会内で集会を開いた。
政府が生活扶助費を3年間で670億円削減することを決めたことは、読者諸氏もご存じの通りだ。削減幅は平均6・5%で、受給額が減る世帯は96%にのぼる。
これとは別に政府は就労支援の強化や医療扶助の適正化などいわゆる「生活保護制度の見直し」によって450億円を削減する方針である。
政府が生活保護費を大幅削減する根拠は「デフレ」に置いている。変だ。値段が下がっているのは高級品で、食糧、光熱費などの生活必需品は値上がりしているのである。生活保護を受給している214万人(156万世帯)は、ツメに火を灯すようにして暮らしてきたと言ってもよい。
「これ以上減らされたらもう生きてゆけない」。生活保護受給の当事者が実情を訴え、支援の法律家たちが政府案の問題点を指摘した。
母子家庭を支える母親は多発性硬化症という難病を患い、子供も病気療養中だ。生活保護はまさしく命の綱である。
「もし保護費が下がったらどんな生活になるのだろうか。水道、光熱費も節約しながら暮らしている。欲しい物があっても深呼吸して何も買わずに帰ってくる。何を節約していいのか分からない位です。普通に笑って過ごしたい。普通に生活したいだけです…」。彼女は時おり声を詰まらせながら訴えた。
東京・北区の男性(75歳)は両手、両足に障害を抱える。「灯油代、電気代の値上がりで生活が破壊されている。これ以上破壊されたら命を絶つしかない」。男性は自由の効かない体から声を振り絞るようにスピーチした。
集会の後、受給当事者や支援者は手分けして国会議員の事務所を回り「生活保護費を削減しないように」と陳情した。
生活保護基準の引き下げは、最低賃金や住民税の非課税などに連動する。長妻昭元厚労相が国会で追及したところ、生活保護に連動するのは38制度(19日現在)にも及ぶことが分かった。就学支援、介護保険料、公営住宅家賃の減免…などだ。
裾野は実に広い。生活保護受給者だけの問題にとどまらないのだ。低所得者の生活はさらに厳しくなりそうである。