江東区 コンクリートのために野宿者を強制排除の構え

野宿者たちは空き缶、古紙回収で生活費を賄う。男性は「1日、1600~1800円になるから暮らして行けるよ」。=2日、江東区・五之橋下。写真:筆者撮影=

野宿者たちは空き缶、古紙回収で生活費を賄う。男性は「1日、1600~1800円になるから暮らして行けるよ」。=2日、江東区・五之橋下。写真:筆者撮影=

 江東区の竪川河川敷公園でテント暮らしを続けてきた野宿者たちが、早ければ今月下旬にも行政によって強制排除される可能性が出てきた。

 15年間もの生活実態があるにもかかわらず、江東区は「立ち退け」というのである。アパートなどの代替住宅の提示もなしにだ。生存権さえ奪う暴挙に批判が集まりそうである。

 墨田川の流れを汲む竪川は、古くは江戸堀と呼ばれて水運を支え庶民の生活に役立ってきた。経済成長を謳歌した昭和後期(1971年)に首都高速7号線が開通すると、高架下の一部は暗渠化された。

 堤防は残り暗渠の上に顔をのぞかせる格好となり、ここに零細業者は物置を設け、野宿者はテントを張った。共有地として機能していたのである。50~60張りのブルーテントが“軒を連ね”、野宿者50余人が暮らしていた。

 数年前から江東区は竪川河川敷公園として再開発に乗り出す。遊歩道、フットサル場、カヌー乗り場を建設するため、ブルーテントの排除にかかった。

 野宿者のうち10余人は2010年10月、江東区の指示により明治通りに架かる五之橋下に追いやられた。

 橋下には約15張りのテントが口の字方に並ぶ。中央部には狭いながらも広場があり、コミュニティーが成り立っている。そこは生活の匂いがする。10余人の野宿者は空き缶・古紙回収で生計を立てており、行政にとやかく言われるような覚えはないのだ。

 江東区は自らで野宿者たちを五之橋下に追いやっておきながら、河川敷公園拡張のために、彼らを再び追立てようというのである。

五之橋下に広がるブルーテント・コミュニティー。=写真:筆者撮影=

五之橋下に広がるブルーテント・コミュニティー。=写真:筆者撮影=


 
 野宿者は「(竪川河川敷きに)15年も住み生活実態がある」として排除命令には応じない構えだ。これに対して江東区は強制執行に乗り出そうとしている。

 立ち退きの強制執行は早ければ今月下旬にも行われる可能性がある。警察隊やガードマンが出動し、緊迫する事態となることも予想される。

 「役所があっち(五之橋下)に行けと言ったから行った。今度はそこも『出てけ』という。責任はどうなってんだ。我々は工事が始まる前からここにいる」。仲間からの人望も厚い佐藤直行さん(仮名・52歳)は、一歩も譲らぬ構えだ。佐藤さんは20年間務めた横浜の港湾関係の会社をリストラされ路上に弾き出された。

 区民が望みもしない河川敷公園の建設で潤うのはゼネコンと政治家と官僚だけである。経済無策の犠牲とも言える野宿者たちが、強欲資本主義とその手先によって再び犠牲者になろうとしている。

 民主党が09年の政権奪取選挙でマニフェストに掲げていた「コンクリートから人へ」は、全くのウソだったのである。

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