【要塞勝俣屋敷・年末編】 2011年を象徴するふたつのテント

大晦日恒例の餅つき大会。つきあがった餅は雑煮として早速振る舞われた。=12月31日昼、墨田公園。写真:中野博子撮影=

大晦日恒例の餅つき大会。つきあがった餅は雑煮として早速振る舞われた。=12月31日昼、墨田公園。写真:中野博子撮影=

 
 墨田川の浅草と本所にかかる吾妻橋から上流を見ると、つい数年前まではブルーのテントがずらりと並んでいた。今はポツリポツリとあるだけだ。

 行政による野宿者(ホームレス)追立ては年々厳しさを増していたが、スカイツリーの建設が進むにつれ容赦なくなった。スカイツリーの遠景を撮影するのにブルーテントが邪魔だという理由で立ち退きを迫るケースもある、という。

 野宿者のほとんどは高齢だ。働き盛りの頃は、日本の繁栄を支えてきた人たちである。行政はスカイツリーがもたらすであろう観光収入を優先し、弱者を切り捨てる。強欲資本主義が国そのものを破壊しつつあることに気付いていないようだ。

テントはじめ毛布、クッションが善意の市民から届けられた。「暖かい」と山口さん。=31日午後、新宿区左門町公園。写真:中野博子撮影=

テントはじめ毛布、クッションは善意の市民から届けられた。「暖かい」と山口さん。=31日午後、新宿区左門町公園。写真:中野博子撮影=

 都心にもテントを奪われそうになった青年がいる。山口祐二郎さん(26歳・雑誌ライター)は、原発事故をめぐる東京電力の不誠実な対応に抗議して勝俣恒久会長邸近く(新宿区左門町)で30日からハンストを続けている。

 山口さんは左門町公園をベースに1日3~4回、勝俣邸前に抗議の“出撃”をする。四谷警察署が山口さんにテントを畳むよう警告したが、町内会の顔役は「テントは立てていていいんだよ」と言ってくれた。その後、警察による「テント撤去警告」はなくなった。

 山口さんのもとには、抗議のハンストをネットで知った市民や友人から毛布、寝袋、クッション、ホカロンなどが寄せられている。今は亡き息子の寝袋を届けたのは新宿区早稲田の女性だ。彼女は「体を大事にするよう」山口さんに説教した。人々の善意に支えられ、山口さんは2012年元旦を迎えることになる。

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