就任わずか2か月余り。これほど早く倒閣デモが起きる首相も珍しい。20日、市民たちが「野田退陣」「TPP反対」を訴えて都心をデモ行進した(呼びかけ人:小吹伸一さん)。
「TPP反対」が「倒閣」とイコールになっているのは、TPPをめぐる野田首相と政府の迷走が止まらないからだ。国会答弁(11日、参院予算委員会・集中審議)で首相がISD条項を知らなかったり、「全ての物品とサービスを交渉のテーブルに乗せる」とアメリカに伝えていたことが明るみに出たりした。
日本のありようが根底から変わるかもしれないTPPについて、政権トップが無知だったことが露呈してしまった。「交渉に入ることを決めただけ」と国民に説明しながら、その裏で「農産物市場や保険」など全品目を舌なめずりする米強欲資本の食膳に供していたのである。国民の間に不信と反感が募るのは当然だ。
新宿柏木公園に集まった集会・デモの参加者たちは口々に怒りを表した。東京北区の会社員(50代)は、「野田(首相)は日本で言ってることと米国(政府)に言ってることが違う。野田(首相)、前原(政調会長)は米国の言いなりだ」。
TPP加盟に反対する理由を「国民皆保険が崩れ、雇用がさらに悪化するから」と話す。大学を卒業した長男はアルバイト、大学4年生の次男は就職が決まっていない。
「食の安全が脅かされる」と心配するのは都内在住の男性(40代・フリーター)だ。「アメリカの農薬は日本の物よりきつくて体に有害」と説明した。
TPP問題を大枠で捉えている男性(60代・年金生活者=都内在住)は次のように指摘する。「グローバリゼーションとか言うと日本人はクラクラする。TPPも原発も根は同じ。マスコミが真実を伝えないのが悪い」。
TPPをめぐっては米国の自動車労組も反対している。日本車が関税なしで入ってきたら米国車はさらに売れなくなるからだ。『全国一般東京ゼネラルユニオン』の執行委員長で米国人のルイス・カーレットさんによれば、アメリカの過半数の労働者がTPPに反対しているそうだ。
再選を目指すオバマ大統領がなりふり構わず突き進むTPPだが、自国の労働者さえも歓迎していないようである。強欲資本主義のために海外諸国に貧困をばら撒いてどうしようというのだ。それに手を貸す野田首相には、国民生活を守るためにも、早く退陣してもらうしか道はなさそうである。