集会開始時刻の午後2時に主催者が「参加者4万人」と発表した時、会場の明治公園に向かう舗道は人の洪水だった。公園は人で埋め尽くされ身動きがとれない。舗道も同様だ。参加者が4万人超であることは確かなようだ。
最寄り駅の「都営大江戸線・国立競技場前駅」ですでに、人々の脱原発に賭ける意気込みが伝わってきた。電車がホームに到着すると家族連れや老夫婦が吐き出されてくる。ほとんどは会場までの道順を地図で確かめていた。政治集会のメッカである明治公園を知らないのである。デモや集会に参加するのは今回が初めてという人が目についた。
千葉県船橋市の主婦(40代)も今回が初めてだ。「政府も東電もいい加減にしてほしい。スーパーで野菜を買う時、不安で仕方がない。マスコミと政府が一緒になって情報を隠したら、国民は何も分からない。ここに来て同じ気持ちの人たちに会えて嬉しい」。
愛知県三河地方から駆け付けた母娘も、政治集会への参加は初めてだ。娘(20代前半)は「まだ独身だが、将来子供を産むことを考えたら原発は怖い。マスコミと政府は何を考えているのか分からない」と率直に話した。
母親(40代後半)は原発に対して積年の恨みがあるようだった。「『核爆弾は反対』でも『原発なら構わない』という変な論理があった。原発は核廃棄物の処理ができないのに、(国民は)反対してこなかった。もの分かりが良すぎた。大人が無責任だった。生きている間にこれだけの大集会はもうないかもしれないので、『原発反対』の意志を表明しに来た」。
東京都豊島区から足を運んだ会計事務所員(男性・70代)の言葉が、象徴的だ。「いても立ってもいられず参加した。マスコミが作っている多数意見は架空のもの。国民の声はここに集まっている人々が代弁している。政府は草の根の声に耳を傾けるべきだ」。
年明け早々の1月、エジプトでは普通の人々がムバラク政権打倒を叫んでタハリール広場に結集した。洪水のように明治公園に押し寄せるオジサン、オバサン、親子連れを見て、筆者の目には「エジプト市民革命」の光景が重なった。
枝野幸男経産相は大臣就任会見(12日)で「脱原発なのか原発推進なのか」を記者団に聞かれ、「国民的議論を見て」と答えた。
政・官・財に操作されたマスコミ論調が世論ではないことに、国民はすでに気づいている。4万人を超える人々が明治公園に集結し「脱原発」を叫んだことが何よりの証だ。