秘密がいっぱい、東電柏崎原発の緩い災害訓練 ~その2~

訓練用・中央制御室。電源喪失を想定したはずにもかかわらず、すぐに非常用電灯が点いた(11日、柏崎刈羽原子力発電所。写真:筆者撮影)

訓練用・中央制御室。電源喪失を想定したはずにもかかわらず、すぐに非常用電灯が点いた(11日、柏崎刈羽原子力発電所。写真:筆者撮影)

 “福島原発で起きた過酷事故を想定した訓練”――そう信じて東京からノコノコ出かけて行った筆者が愚かだった。

 前項でも少し触れたが、訓練用中央制御室ではすぐに非常用電源に切り替わり電灯が点いた。福島の事故は非常用電源も落ちたのである。筆者が報道担当者にそれを指摘しても、彼は何食わぬ顔だ。

 福島の教訓を活かそうという緊張感などかけらもなかった。訓練のメインイベントは電源車が出動する電力供給だった。

 東電社員たちが指差呼称で確認しながら電源車から延びるコンセントを原子炉建屋のプラグに差し込む。一見キビキビした動作だ。報道陣のカメラが群がった。

 全電源喪失は確かに過酷事故だ。だがワンノブ・ゼムに過ぎない。燃料棒がむき出しになることもある。チェルノブイリ事故のように制御不能に陥ることも想定しなければならない。

 制御棒が入らなければ核反応が止められなくなり、制御不能となる。核が暴走し環境に高濃度の放射性物質を撒き散らす事態となるのである。

 訓練で報道陣に同行した新井史朗・副所長に尋ねた。「苛酷事故は電源喪失だけではないですよね?」

 エンジニア出身の新井副所長は質問をかわした。「停める、冷やす、封じ込める、ですからね」。

 柏崎刈羽原発のすぐ沖には活断層が横たわる。地震が起きると刈羽村は大きく揺れると言われるのはこのためだ。揺れが大きかったり縦揺れが加わったりすると制御棒は入りにくくなる。入らなくなることもある。制御不能となり臨界にまっしぐらだ。

 2時間半に及ぶ災害訓練が終わり、地元記者クラブが新井副所長にぶら下がった。

「総括は?」

「手順通りにホースが接続されたかなど細かいところをチェックできて意義あるものとなった」

「電源車が機能することが分かり手ごたえを感じたか?」

「感じた・・・」

 訓練は電源喪失のみを仮定したものだった。あげくに電源が落ちても非常用電源にすぐ切り替わった。電源喪失ではないのだ。こんな優しい苛酷事故は万にひとつもありえない。

 監視するはずの報道機関も東電とズブズブだ。

 人間の制御が効かなくなる危険性を孕む怪物。それが原発なのである。飼い主は怪物を躾けきれない。監視役は飼い主に注意しない。怪物はまた暴れるだろう。

 東京電力の清水正孝社長は13日の記者会見で「柏崎刈羽では安全対策をしっかり行っています」と大見得を切った。

 筆者はすかさず清水社長のウソをあばいた。「私はおととい(11日)、柏崎の災害訓練を見てきましたけど、実に緩い訓練でしたよ」。清水社長は顔色を失った。

この会見で清水社長は原発に関心のある人たちが腰を抜かすような発言をした。運転休止中の柏崎刈羽原発3号機について「運転を再開したい」と意欲を示したのである。

 3号機は07年に発生した中越沖地震で被災した後、ずっと点検中のままだ。昨年12月には制御棒の誤挿入(事故)が起きており、原子炉が傷んでいるのではないかと指摘する向きもある。

 原子炉の傷みを放置したまま運転を再開すれば大事故の発生は必至だ。怪物を扱っているという認識のない人たちに任せていたら、日本は怪物に滅ぼされることになるだろう。

      

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