「ストーリーに沿った逮捕・取り調べ」「メディア・スクラム」「自白偏重の裁判」・・・歪んだ刑事司法と記者クラブによって作り出された色彩が濃い枚方官製談合事件。最大の“被害者”でもある中司宏・前枚方市長が8日、記者会見(主催:自由報道協会)で常軌を逸した検察の取り調べや記者クラブの世論操作の実態を明らかにした。
枚方官製談合事件は枚方市が2005年に発注した清掃工場の建設をめぐって不正競争入札(談合)があったとして大阪地検特捜部が、大手ゼネコンの大林組顧問、大阪府議、府警警部、同市の中司宏市長、小堀隆恒副市長を競争入札妨害罪などで逮捕した。
中司市長は電子入札など談合防止のための制度作りに積極的に取り組んでいた。身に覚えのない逮捕劇だった。
大林組顧問は執行猶予付有罪、府議と府警警部補は実刑が確定した。小堀前副市長は無罪判決(確定)を受けたにもかかわらず、中司前市長は1、2審とも有罪となり現在上告中である。
有罪と無罪の分かれ目となったのは自白調書へのサインだ。中司前市長はサインし、小堀前副市長は最後まで拒んだ。
「サインしたことは私の人生の中で最大の悔い。悔やんでも悔やみきれない」。中司氏はこう語り唇を震わせた。
中司氏によれば検察の取り調べは苛烈を極めた――
「人間性をズタズタにするような言葉を浴びせ、机を叩き蹴飛ばす。あげくに『小堀(副市長)はもう認めたんだぞ。お前だけが突っ張ってると小堀にもお前の親族のためにもならんぞ』『何年もここ(拘置所)から出られんぞ』と脅してきた」。
「小堀さんや親族に迷惑をかけてはいけないと思い、仕方なくサインした。裁判所も事情を察してくれると思ったのが間違いだった」。
中司氏は力なく語った。
ところが小堀副市長は最後まで否認して自白調書にはサインをしなかったのだ。それでも新聞・テレビには「小堀副市長、容疑認める供述」の見出しが躍った。
小堀副市長(当時)に対する取り調べはさらに惨いものだった。
腎臓ガンを患った小堀副市長は片方の腎臓を切除している。逮捕当時は前立腺肥大症で投薬中だった。取り調べによる過度のストレスで小便が出なくなった。高齢の医務官が尿道にカテーテルを挿入したのだが乱暴だったため尿道出血が止まらなくなった。尿漏れも続いた。このため小堀氏は介護用のオムツをつけさせられ取り調べを受けたのである。
中司氏の話は記者クラブメディアにも及んだ。逮捕される2か月位前から連日、誹謗中傷記事が紙面やテレビ画面を賑わした。ある全国紙に対しては事実無根のため名誉棄損で訴訟中だ。
枚方支局の記者が「市長はそんな悪いことはしていない」と書いたところ、検察庁担当の記者から叱られて飛ばされた(左遷させられた)。「枚方市長はトンデモなくヒドイ男である」との世論操作をしておけば、検察は無理な捜査を重ねることも可能だ。
検察と記者クラブメディアが冤罪を作り出す“共犯者”なのである。
記者会見には足利事件の無罪を勝ち取った佐藤博史弁護士が同席した。中司氏の弁護団に入ることになったのである。佐藤弁護士は「冤罪は特殊な人だけじゃない。皆、明日は我が身の問題」と強調した。
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