検察による自白調書の信憑性が疑われ元厚労省局長の無罪判決が確定した郵便不正事件で、改めて取り調べの可視化を求める声が強まっている。こうしたなか「取調べの全面可視化を実現する議員連盟(民主党)」の会合が28日、衆院議員会館で開かれた。
この日の会合では元検事で名城大学教授の郷原信郎氏が講演した。郷原氏は検事出身らしくツボを突きながら検察の組織のあり方を次のように批判した――
ストーリーを一度設定したらダーッと突っ走ってゆく。「割り屋(被疑者の供述を取ることに長けた検事)」として、前田検事が重宝されてきたことを考えなければならない。この事件の本質は構図が破綻しているのに村木元局長を逮捕、起訴し有罪を取ろうと進めてきたことにある。最高検は当事者だ。
その最高検が(特捜検事によるデータ改ざん事件)の調査(検証)をすることが許されるだろうか。弁護士など外部の第3者を入れた調査チームを作る必要がある。
検察の現状は放置し難い。特捜事件の取調べは全面可視化すべき。可視化をしなくていいという理由はひとつもない。~郷原氏の話はここまで~
郷原氏が講演していた頃、衆議院会館の目と鼻の先にある法務省では最高検の検証チームが初会合を開いていた。外部の有識者の意見を踏まえるというだけで、検証チームは検察の部内者のみによって構成される。伊藤鉄男次長検事を座長に検事13人からなる。郷原氏の懸念は不幸にも的中した。
「取調べの全面可視化を求める議連」は今年1月、小沢一郎前幹事長の資金団体「陸山会」の土地取引をめぐり、石川知裕議員が政治資金規正法違反で逮捕されたことをきっかけに発足した。石川議員は「検事に誘導された」として罪状を否認する方針を固めている。この事件では小沢氏の元秘書3人が逮捕、起訴され、小沢氏も執拗なまでに東京地検特捜部の事情聴取を受けている。
「可視化議連」の大半は先の民主党代表選挙で小沢前幹事長を支持した議員たちだ。27日付の拙稿で述べたように、仙谷由人官房長官は政敵・小沢一郎を屠るために、可視化を握り潰す構えである。
会合の後、議連のある幹部は「政府があまりやる気ないからね」とこぼした。
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