【ガザ発】「娘たちがいなかったら頭を撃ち抜いて死ねるのに」

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「破壊直後よりも今の方がもっと悪い」と憤慨するハドゥルさんだが、娘たちのために自殺を思い留まっている(16日、アルショハーダ村で。写真:筆者撮影)

 昨年、イスラエル軍の爆撃で村がすっぽりと消えたガザ市北東部のアルショハーダ村。生き残った村人は今頃どのように暮らしているのか、と長く気にかかっていた。
 
 イスラエルとの境からわずか西に1キロの場所にあるアルショハーダ村は戦略要衝の地であることから、ガザに陸上侵攻してくるイスラエル軍とそれを阻止せんとする「イスラム聖戦」との間で凄絶な白兵戦が繰り広げられた。村が全滅したのはこのためだ。

 運良く一命を取り留めた人々は、かつて自宅だった瓦礫の隙間で暮らしていた(写真下段参照)。ハドゥルさん一家も、家族20人が広さ10畳、高さ1メートル50センチほどの空間に身を寄せ合っていた。雨水を集めてコーヒーをたてていたハドゥルさん(当時47歳)を思い出す。(拙ジャーナル『村は徹底的に破壊され絶望だけが残った』~09年2月23日付け参照)。

 あれから一年半ぶりに村を訪れた。幾何学模様を描くように並んでいた国際赤十字のテントは一張りもなくなっていた。代わりにコンクリートを再利用したブロック作りの家屋やトタン葺きの住宅が散在する。数えるほどしかない。イスラエル軍侵攻前は100家族以上いた村も、今では20家族しかいない。

 まるで工場跡地のような広い空き地で、飴のように曲がった鉄筋を真っ直ぐに伸ばしている男性がいた。近づいてみるとハドゥルさんだった。筆者を見ると「ヤパン・ジャーナリスト」と呼んだ。覚えていたのだ。

 村が破壊される前、ハドゥルさんは家畜を飼い、オリーブやレモンなどを栽培し年収が100万円あった。今は無収入に近い。伸ばした鉄筋は1,000㎏で4万円ちょっとにしかならない。1,000㎏に達するには数ヶ月もかかる。イスラム教会からの寄附で細々と生計を立てている、という。

 今はコンテナ住宅に住む。コンテナは叔父からもらった。夏はむせ返るように暑い。4畳ほどのスペースに10人が枕を並べる。

 ハドゥルさんは、イスラエルが侵攻してきた時の状況を問わず語りに話し始めた。繰り返しが多い。1年半前と全く同じだ。「精神を病んでいるんだ」と自ら言う。

 「娘が10人もおらず、自分一人だったら拳銃で頭を打ち抜いて死ねるのに…」。ハドゥルさんは幾度も繰り返し訴えた。

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昨年2月、爆撃直後のハドゥルさん一家。ハドゥルさん(右端)は溜めた雨水でコーヒーをたてていた(アルショハーダ村で筆者撮影)

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