「事業仕分け」伝える大メディアの姿勢

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テレビカメラは仕分け人側と官僚側双方を追う(印刷局体育館・新宿区。写真=筆者)

 「はぐらかさないで答えて下さい」、仕分け人が小気味良く迫る。
「……」、返答に窮する官僚。
そこに「スパコン研究予算を削るのは不見識だ」とノーベル賞学者が場外乱闘に加わる。
 各省庁が要求する来年度予算のムダを指摘する行政刷新会議の「事業仕分け」が面白い。我々が払う税金の使い道を初めて「可視化」したこともあり、今や国民的関心事ともなっている。これをメディアが見逃すはずはない。
 テレビの情報番組、ニュース番組は朝から晩まで、高視聴率を狙って「事業仕分け」を伝える。
 テレビ局の力の入れようは大変なものだ。「仕分け作業チーム」は3つのWG(ワーキング・グループ)に分けられているが、すべてのWGにクルーが張り付く。しかも仕分け人側と官僚側の双方を追うので1WGにつき2クルーが必要だ。単純に計算すれば、会場全体では1社につき6クルーも出していることになる。
 新聞は「昨日の仕分け結果」を一覧表にして詳しく伝える。仕分け人と官僚の応酬も、臨場感たっぷりの現場ルポで紹介する。こちらも熱のこもった報道だ。
 だが筆者は同じ現場を取材していて、大メディアの報道には違和感を覚えて仕方がない。
 ほとんど全ての事業で俎上に上るのが、天下り官僚による膨大なムダ使いだ。国の補助金事業は、幾つもの独立行政法人(独法)や公益法人を経てやっと事業者本人に渡る。「中抜きはどれ位(金額)あるんですか?」と仕分け人が再々追及しても官僚は答えない。
 420万社ある中小企業を支援する事業のはずが、昨年融資を受けた企業はわずか800社という実態が、明らかにされた。補助金の流れを辿ると、天下り法人に落ちた金額の方が企業に落ちた金額よりもはるかに大きい。役人に食い物にされ国が沈んでいく構図が改めて白日の下にさらされた。
 仕分け人が「これじゃ、中小企業を支援するんじゃなくて、天下りを支援する事業じゃないですか」と厳しく指摘した。官僚は反論できなかった。WGの判定結果は削減だった。
 それでもあるテレビ番組は問題の『中抜き』には一切触れず、「補助金でA商店街はこんな恩恵を受けてきた」「補助金が削減されるとB商店街は困る」と報じた。
 番組に出演する有識者やジャーナリストは、ほとんどが「税金の使い途が透明化されることは良いこと」とコメントする。だが映像は「仕分け人が一刀両断に斬りまくる」という作りだ。
 中小企業支援をめぐる経産省の予算要求に限らず、大概の省庁の事業についても似たような作りだ。視聴者が「仕分け人というのは随分と乱暴だな」と感じるような映像構成になっている。
 なぜ大メディアが官僚の肩を持つのか納得させる光景を時々会場で見かける。説明に来ている官僚はベテランだ。省庁詰めの記者との付き合いは長い。ヒアリングを終えて取り囲んだ記者が社名を告げると、「○○さん、元気?」と先輩記者の名前を挙げるのだ。
 省庁クラブ詰めの記者は日頃から官僚に世話になっている。省庁の行政をウォッチングするのが仕事だから、政策ひとつにしても官僚からいろいろと教えてもらう。報道課の官僚に放送原稿の草稿を書いてもらっていたという記者も過去にいた(その人物は現在、衆院議員として“活躍”している)。
 官僚とのこうした関係が連綿と続くと、官僚批判など本気でできる訳がない。急所を突くことなどできっこない。
 「仕分け作業」を伝えるテレビ報道は、一見迫力がある。だが国が沈んでいく構図は、見せることができない。

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