大方の予想通り、東京が「2016年オリンピック」の開催地に選ばれることはなかった。IOC総会を半月後に控えた9月17日、都庁で「東京オリンピック出陣式」なる珍妙な壮行会が催された。落選を予期していたのだろうか。「残念会」とでも呼んだほうがふさわしいほど、沈んだ雰囲気だった。
「出陣式」に先立って、石原都知事や河野一郎・東京オリンピック招致委員会事務総長らによる記者会見が開かれた。
ジャーナリストの常識として「勝算はあるのか?」「もし落選したら、巨額な招致費用が無駄になるが?」などと質問するはずだ。
ところが記者会見は都庁側による「仕込み」だった。記者クラブ側から出された質問は「東京のどんな所が素晴らしいとアピールするのか?」「IOC総会ではどんな演説をするのか?」……。
石原氏、河野氏は「待ってました」とばかりに宣伝を始めた。「環境対策が優れている」(石原氏)、「選手がベストコンディションで臨める」(河野氏)。石原知事の「環境」は耳にタコができるほど聞かされた。果たしてこの日本は世界に自慢できるほど立派な環境だろうか。
河野事務総長の唱える「選手がベストコンディション…」は当たり前ではないか。選手がベストのコンディションで臨めなかったら、それこそ大問題だ。
東京都はオブザーバーのような格好で招いていた海外の記者にアピールする狙いがあったのだろう。だが、彼らは「何故この人たちはこんな当たり前のことを自慢するのだろう」と受け取ったはずだ。
外国の記者たちは一方で、石原都政にまんまと乗せられる都庁クラブの記者たちを奇妙に思えて仕方なかったのではなかろうか。現場にいた筆者は「ここまでコケにされているのか」と呆れるばかりだった。
いよいよ開催地が決まる2日、東京オリンピックに反対する弁護士や都議会議員らは、わざわざコペンハーゲンまで出向いた。オリンピック委員関係者に面会するなどして「東京は開催地としてふさわしくない」と訴えた(共同通信)。だが、新聞、テレビは取り上げなかった。
オリンピックが東京で開かれればテレビは視聴率が取れ、新聞の広告収入も増えるものと見込まれていた。メディアが石原知事らの尻馬に乗り囃し立てた「五輪狂奏曲」は終わった。
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