酒井法子も踊らされた警察の覚せい剤キャンペーン

 覚醒剤を所持、使用した容疑で女優・酒井法子が逮捕された事件をめぐる報道は今日(13日)あたりから沈静化し始めたようだ。少なくとも朝のワイドショーのトップではなくなったし、量(放送時間)も減った。
 それにしても事件発生の先週から今週前半にかけての過熱報道は凄まじかった。日本中にこれしかニュースはないのか、と思わせるほどだった。
 芸能人やスポーツ選手など有名人を何がしかの容疑で逮捕した時の警察のメディア操作は今回も巧みだった。
 警察によるマスコミ対応は以下のような段取りである――
 容疑者が警察に出頭する前にクラブ加盟社に知らせカメラを貼り付かせる→逮捕の瞬間からメディアは大騒ぎとなる→容疑事実は小出しにする→騒ぎが長持ちする。
 20数年前に元阪神タイガースのエース江夏豊を覚醒剤所持、使用で逮捕した際、大阪府警は「ひき回し」までやった。ひき回しとは手錠をかけた容疑者を縄で引きマスコミの前にさらすことである。人権がうるさく言われる昨今、「引き回し」は廃止された。トップアイドルだった酒井法子が「引き回し」に遭う姿を想像できるだろうか。
 今回の事件では酒井を逮捕したのが夜ということもあり、渋谷署は「弁録(※)」を取っただけで寝させたはずだ。翌朝から本格的な取調べとなるのだが、今週前半報道されたような事実は、酒井が翌日か翌々日に自供しているものだ。
 仮に8つの容疑事実を警察がつかんだとしよう。警察は1日に1つづつ発表して8日間、騒ぎを持たせる。スッパ抜かれないように「夜回り取材」に来た記者には予め幾つか教えておいて「これは明日、あさってのうちに広報するからね」と釘を刺す。業界の仁義でこうされると書けない。
 マスコミに大きく長く扱わせることで警察が得るものは何か。「警察は覚醒剤取締りに本腰を入れて取り組んでおり、成果もあげています」。これである。有名芸能人やスポーツ選手は効果抜群のキャンペーン素材となる。
 昭和40年代後半から50年代にかけて、警察は暴力団撲滅キャンペーンを繰り広げた。格好の餌食となったのが昭和の歌姫、美空ひばりだった。山口組組員の実弟は、他の組員だったら見逃されるようなことでも逐一逮捕され、その都度マスコミに大きく報道させた。NHKは弟の事件と絡めて美空ひばりを紅白に出場させないなどした。
 酒井の逮捕劇で覚醒剤が人体に危険なクスリであることが改めて強調されている。警察庁制作のビデオを放送するワイドショーもあるほどだ。こうした報道を受けて論客と呼ばれる御仁たちがのたまうのは「覚醒剤で10年以下の懲役というのは軽過ぎる。東南アジアでは極刑だ」。
 厳罰化すれば手を出すのが怖くなり、覚醒剤犯罪は確かに減るだろう。だが暴力団の一大資金源は絶たれることになる→日本の暴力団はさらに弱体化する→チャイナ・マフィアは一層力をつける→迷宮入りする犯罪がさらに増える。
 「暴力団対策法」はヤクザを細らせることを狙った法律だが、現場の刑事は「天下の悪法」と口を揃える。警察官僚も口にこそ出さないが認めているはずだ。理由は上に記した図式が示す。
 覚醒剤取締り法違反の量刑を引き上げるべきか。酒井の事件をアドバルーンに警察は世論の動向をうかがっているはずだ。

 ※弁録
弁解録取書の略。警察・検察が逮捕した直後、被疑者から被疑事実について認否などの言い分を聴きとり、正式な調書としたもの。後日の裁判でも証拠として重視される。逮捕される者は憲法34条によって被疑事実の告知や弁護の依頼などの権利が保証されており、これに基づく。

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