小沢代表辞任、「角栄型政治」の終焉か

 西松建設からの不正献金事件を受けて民主党内で日増しに強まる辞任要求を前に、小沢一郎氏は代表を辞することを決断した。小沢氏は記者会見で「政権交代」「挙党一致」のフレーズを幾度も繰り返した。おそらく真意だろう。
 前回衆院選(2005年)の惨敗や東京都知事選(07年)の不戦敗に象徴されるように万年野党に甘んじていた民主党を、政権獲得目前の所まで引き上げたのは小沢氏の力量と執念だった。民主党が指令塔を失ったことで、政権交代の道筋は見えにくくなった。
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小沢一郎代表(民主党本部で筆者撮影)

       【自分の票の出所も知らない民主党議員】
 小沢氏が自民党最大派閥の経世会を割って出たのは1993年、今から16年も前のことだ。宮沢内閣不信任案に賛成票を投じ、40年近くに渡って続いた「55年体制」を崩壊させたのである。
 不信任の理由のひとつは、自らが主張する「政治制度改革」について党内の理解が得られなかったことだった。「官僚内閣制」を打破するためにはいつでも政権交代可能な2大政党制にしなければならない。そのための小選挙区制導入だった。
 これは表向きの理由で、真相は派閥オーナーである金丸信・元副総裁の失脚に伴う、小渕恵三、梶山静六氏らとの主導権争いに敗れたためとする見方が有力だ。主導権争いとは突き詰めて言えば、金丸亡き後の経世会の遺産相続争いだった。
 田中角栄元首相の秘蔵っ子としてその政治手法を学んだ小沢氏は、「金」にまつわるスキャンダルがついて離れなかった。一方で他党や他派閥を寄せつけない強力な選挙戦術も「角栄直伝」で受け継いだ。
 小沢氏の面目を躍如させたのは、2007年夏の参院選だ。大幅に議席を伸ばした民主党は参院の第一党となり、野党が過半数を占めるに至った。「ねじれ状態」を作り出し自民党を窮地に立たせた。思うにならない国会運営が安倍→福田と立て続けに辞任に追い込んだのだから、参院選の勝利は大きい。
 それまでの民主党はとかく「風頼み」だった。自分の票の出所さえ知らない国会議員が少なくなく、筆者は幾度も腰を抜かした。「これじゃあ、勝ったとしてもマグレだ。政権など永遠に獲れっこない」と確信したものだった。
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政権交代への道筋は見えにくくなった

       【経世会の選挙戦術を持ち込む】
  経世会全盛時代の選挙戦には舌を巻いたことがある。一例を挙げるとこうだ。自派の候補が対立候補の後塵を拝していたとする。経世会系の陣営はどの地区で●票差、どの業界で●票差と割り出し、投票日までに劣勢をひっくり返すのだ。
 地区であれば●丁目単位で票を読む。業界も緻密に分類していた。なかでも自民党の大票田だった農協については目を見張るものがあった。当落争いが熾烈を極める選挙区ではミカン農家が●票、ナスビ農家が●票などと生産品目別に割り出すのだ。もちろん農家全体で●●票と読んだ上でだ。
 市町村長を集票マシーンとして存分に利用していたのも経世会だった。首長は思いのまま動かせる手勢を持っている。「自分党」とも呼ばれるゆえんだ。大きな数(票)の塊である。首長が革新陣営であろうが、公共工事の提供などを見返りに「自分党」の票を提供してもらう。 

 経世会の選挙は「票の出し方」を科学していた。こうした手法を知っているのは民主党では唯一小沢氏と言ってよい。小沢氏は草の根を分けて票を掘り出す選挙戦術を民主党に持ち込んだ。それが実を結んだのが、前回参院選挙(07年)での民主党の大躍進だった。
 上記の手法で固い票を出すには、選挙区を丹念に歩いて汗をかかなければならない。民主党の多くの候補者は、これを嫌う。筆者は小沢氏に「民主党の候補者は自民党に比べると汗のかき方が足りないのではないか」と尋ねたことがある。小沢氏は我が意を得たりとばかりに頷いた。
 昨年秋、全国行脚に出た小沢氏は皮切りの東京で、事務所に腰を降ろしたままの有名立候補予定者を怒鳴りつけた。小沢氏は、汗をかくことを「ドブ板」と小馬鹿にして厭う多くの民主党候補者の体質が歯がゆくて仕方がなかった。この体質は今もほとんど変わっていない。
 小沢氏が代表の座を降りたことで、多くの立候補予定者は再び「風頼み」の選挙戦に戻りかねない。民主党内では、小沢氏は「選対本部長」として選挙戦の指揮を執るとの見方があるが、「代表」ほどの影響力は発揮できない。
 万年野党だった民主党をここまで強くしたのは角栄直伝の選挙戦術であり、小沢氏を辞任まで追い詰めたのも角栄譲りの金銭スキャンダルだった。角栄型政治の終焉と見るのは早計だろうか。

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