【カブール発】アフガニスタン(5)紛争地域のジャーナリズム

パジュウォーク編集部(撮影:いずれも筆者)

パジュウォーク編集部(撮影:いずれも筆者)

【カブール発】 内戦終結後も紛争が絶えないアフガニスタンの実情を世界に発信し続けている通信社が、首都カブールにある。Pajhwok (パジュウォーク)News Agencyだ。2004年7月に発足。アフガン全土に8支局を持ち、24州に1人ずつ契約記者を配置する。

 英語、パシュトゥー語、ダリ語で1日30本から40本の記事を制作する。キリスト教国の欧米メディアが、アフガニスタンに支局を出すのは至難の業だ。 BBCなど欧米をはじめ世界のメディアが配信を受ける。会社の収入源は世界から入る配信費だ。個人で読むだけということで配信を受ければ、1年につき500ドルという例もある。 

 編集方針は不偏不党。カルザイ政権からの圧力は今のところないという。圧力と恐怖にさらされるのは地方支局と各州の契約記者だ。「パジュウォーク」社の記者が被害に遭ったケースを列挙する―

・自爆テロに巻き込まれ大ケガ(2月パクティア州で)

・タリバーンに誘拐される。タリバーンのスポークスマンと「パジュウォーク」社との人間関係が良好だったため2日で解放される(2月ウルズガン州で)

・タリバーンと米軍の戦闘現場を取材中、国軍兵士からカラシニコフ自動小銃の銃座で殴られる(4月、ナンガラハール州で)

・デモを取材中、人々から投石を受ける(3月、ナンガラハール州で)

 死者は今のところ出ていない。遠隔地ほど地方政府から支局に対するプレッシャーが強いという。最も危険なのはヘルマン州とカンダハール州。両州とも最南部でタリバーンの聖地だ。ISAF、米軍、NATO、アフガン国軍が結集してタリバーン掃討作戦を展開しており、治安も悪化している。

 編集者のジャベード・ハミームさんは今年9月、外務省の招きで日本を訪れた。10日間の滞在中、朝日新聞、読売新聞、共同通信などを見学した。日本びいきだ。

 平和な日本と違ってアフガニスタンで最も問題なのは何か?ハミームさんに聞いた。

 「カラプション(汚職)」とハミームさんは即座に答えた。

 「汚職が最大の問題」と語るハミームさん。

「汚職が最大の問題」と語るハミームさん。

 「世の中の隅々までワイロが横行している。イタリア人技術者を誘拐し殺害した罪で刑務所に収監されていた犯罪者でさえ、先月ワイロで出獄した」。ハミードさんは肩を落としながら話す。

 汚職は国の荒廃ぶりを示すバロメーターだ。凶悪犯罪を犯した人間がワイロを使えば簡単に出獄できる。金さえ持っていれば、人殺しだって何だってできるということだ。暗黒社会そのものではないか。

 玄関前を警備する警察官。右肩にショットガンを下げている。

玄関前を警備する警察官。右肩にショットガンを下げている。

 
 カルザイ政権の問題点を聞いた。「地方の貧困」との答えが返ってきた。「教育は行き届いておらず、インフラも悪い」と憂う。

 戦乱が続いてきた地域は、識字率の低い国が多い。教育の普及に手が回らなかったからだ。ところがこうした国に行くと、自国語も読めない人々が多いのにもかかわらず、英字新聞がある。アフガニスタンでも発行されていた。編集・制作はCIAだ。「○○州の族長はタリバーン支持からカルザイ政権に寝返った」などとのプロパガンダが流される。

 「人々の暮らしはどうなっているのか」「部族の族長は本当はどう考えているのか」。国際社会が知りたいのはそれだ。各州に記者を配置し、アフガニスタン人の目線から情報を発信する「パジュウォーク」への期待は大きい。
 

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