参院宮城選挙区の現職・愛知治郎(自民公認)は、外務大臣、大蔵大臣などを歴任した祖父・揆一から続く名門愛知家の3代目。今回の選挙で4期目を目指す。
愛知家の金城湯池に挑むのが、政治経験のない新人の石垣のりこだ。しかも支持率低下に歯止めのかからない立憲民主の公認候補ときている。
定石通りいけば石垣に勝ち目はない。だが石垣は定石をひっくり返す戦いを繰り広げている。
ちょうど30年前、1989年の参院選を思い出す。それは主婦たちの一揆だった。
徳島選挙区が象徴していた。当時、お米は政府の統制管理下に置かれていた。司っていたのは食糧庁(2003年廃止)。
元食糧庁長官で参院議員3期目を目指す亀長友義は、出身地の徳島で無敵の強さを誇っていた。
そこに敢然と挑んだのが乾晴美という女性の新人候補(社会党公認)だった。乾が掲げるスローガンは「消費税反対」。ワンイシューと言ってもよかった。
乾のスローガンは共感を呼び、主婦たちが割烹着姿で「消費税反対」の横断幕を掲げ、街を練り歩くほどだった。
「消費税反対」の風が吹きまくり、選挙は乾の勝利となった。
食糧管理法(1995年廃止)が絶大な規制力を持ち、スーパーで米を売ったりできない時代の元食糧庁長官に、無名の新人候補が勝ったのである。
この選挙では「消費税反対」を訴える革新系候補が各地で当選し、参議院で自民党を過半数割れに追い込んだ。
「山が動いた」。土井たか子社会党委員長の名文句はこの時の言葉だ。
1989年7月の参院選当時、連合はまだなかった(連合の結成は同年11月)。消費税反対が全国的な運動となったのは、連合という存在がなかったことも大きい。
あれから30年経ったとは言え、消費税が家計に重くのしかかり、庶民をいじめる酷税であることに変わりはない。
官邸広報と揶揄される記者クラブメディアの世論調査でも、国民の過半数が消費税導入に反対している。
立憲民主党本部や地元県連からの有形無形の圧力をはねのけて、石垣のりこが「消費税はゼロでいい」と言い続ければ、強敵の自公を打ち負かすこともできる。
初当選の記者会見で石垣は「山が動いた」と言うだろうか。(敬称略)
~終わり~
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