「・・・その他の野党の皆様、心から感謝を申し上げたいと思います」。
衆院補選東京10区。選挙戦最終日となった22日、大塚駅頭で開かれた民進党鈴木ようすけ候補のマイク納めで、野田幹事長はこう応援演説を締めくくった。
「その他の野党の皆様」とは何だ。なぜ具体的な党名を上げることができないのだろう。この日、マイク納めに東京都選出の民進党国会議員は顔を揃えたが、他党の国会議員は姿を見せていなかった。街宣車の周りには民進党のノボリだけがはためいている。
民進党の推薦なしに市民と野党共闘で勝利した新潟知事選のように、各党から議員や支持者が結集すればもっと盛り上がり、華々しいマイク納めとなっただろう。民進ブルーだけの駅頭はどこか寂しいものがあった。
“その他の野党” の地元区議が明かす。「民進党からは一貫して声が掛からなかった」と。また、共産党が独自に鈴木候補の応援運動をやると「保守票が減る」と文句を言ったりしたそうだ。候補を下ろしてくれたのは共産党である。
まるで自分たちだけで選挙をやっているかのようなジコチュー民進党に “他党” の支持者が怒ったことがあった。20日に行なわれた池袋駅前街宣に、野党各党から党首クラスが参集したのに候補者本人が来なかったというのである。
20日の街宣には共産党からは志位委員長、社民党・福島みずほ副党首、自由党・山本太郎共同代表、沖縄の風・糸数慶子代表というメンバーが駆けつけ、野党共闘を強く印象付けた。
前日に公開された本人の行動日程に、池袋街宣と同時間の個人演説会が予定されていたため、「まさか党首が来るのに顔を出さないのか?」とSNS上では憶測が飛び交っていた。
ところが本当に来なかったので、激怒する共産党支持者もいたようだ。
一夜経つと、どこからともなく噂がネット上を駆け巡った。本人は出たかったが、連合が嫌がったと。しかも、連合本体は「野党共闘」に腹を立て、鈴木陣営を手伝っていた運動員を引き上げさせたという話だった。
かわいそうなのは候補者本人だ。他党の協力なしに選挙できるわけではないのに、共闘を打ち出せば支持母体からそっぽを向かれる。
最終街宣にはいかにも組合の動員というスーツ姿の男達があちこちにいた。連合傘下の会社から来たという男性は、本体が運動員を引き上げさせたという話を知らなかった。単組で鈴木候補の支援を続ける組合がいくつもあったからだ。
鈴木候補を支えてきた地元市民グループの幹部が事情を明かした。
「運動員を引き上げさせたのは、連合が(野党共闘の)福岡衆院補選、新潟県知事選に不服がある。そういうメッセージだろう」。
「市民が手伝うことで、市民とやっていくことが王道だと民進党には分かって欲しい。候補者は分かっている。板ばさみでしょう。一緒にやれるんだという体験を積んで欲しい。いつかは(連合頼み)をふっ切らなきゃ。それが今だと思うんです」。
市民グループは民進党が市民との共闘に目覚めることにかすかな期待を抱いていた。
集会に参加した有権者は、口々に、自民党を勝たせたら「憲法改正される」「基本的人権が削除される」「格差が拡大する」とアベ政権に対する危機感を訴えていた。
この声にどう応えるのか。民進党はそろそろ、本気で「脱連合依存」を考える時期に来ている。
~終わり~
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