おびただしい数の尊い命を犠牲にした先の戦争の反省に立ち、海外での武力行使を禁じた憲法第9条。戦後日本の象徴である平和憲法が、なし崩しにされようとしている。「集団的自衛権の行使容認」のことだ。
この国の形が変わるほどのことなのに、連立与党は密室で字句のいじり回しに現(うつつ)を抜かす。
今国会はきのうで終幕した。それでも字句をめぐる与党協議が続く。国会軽視どころか国会無視だ。国民無視の言葉遊びである。
今夕、首相官邸前で集団的自衛権の行使容認に反対する集会が開かれた(主催:解釈で憲法9条を壊すな! 実行委員会)。
「ブキブキ(武器・武器)マン いらない」のプラカードを手にした女性(清瀬市・主婦)は戦前の生まれだ。「おじたち3人が戦死している。この悲劇が繰り返される。戦争は殺し合い。今が踏ん張り時だ。あの時何もしなかった、と後悔しないよう頑張っている」。彼女は目を大きく見開きながら語った。
昨日、都内で若者たち1,000人が参加して反戦デモを繰り広げた。憲法9条が事実上壊されれば、自らが戦地に行かされる可能性もある。若者たちは危機感を募らせている。
都内の大学2年生(男子)は「(日本に)徴兵制はない。だが勉強はしたいけど金がないという人が、戦場へ行くことになったりしないか。奨学金(返還)も学費も高いし…」男子学生は慎重に言葉を選びながら話した。
安倍首相はオーストラリア訪問に出発する来週末までには、何が何でも与党合意に漕ぎ着けたいようだ。
オーストラリア外相が12日に来日した際、日本が集団的自衛権の行使を表明し憲法解釈を変更することに期待感を示した。安倍首相はオーストラリアからの期待に応えたいのだろう。
国民への説得など2の次、3の次のようだ。
《文・田中龍作 / 武藤凪》