被ばく牛、国に抗議 「棄畜の次は棄民」

牛は体のいたる所に直径2㎝ほどの斑点があった。=20日午後、農水省前 写真:田中=

牛は体のいたる所に直径2㎝ほどの斑点があった。=20日午後、農水省前 写真:田中=

 原発政策を推進してきた霞が関に、白い斑点の浮かんだ牛が突如として現れた。福島県の旧警戒区域(原発から20キロ圏内)で飼育された一頭の和牛だ。白い斑点は放射能由来との見方もある。

 牛を連れてきたのは牧畜家の吉沢正巳さん(浪江町・60歳)と松村直人さん(富岡町・54歳)。吉沢さんは東電福島第一原発から14キロしか離れていない「希望の牧場」で和牛など330頭の牛を飼育している。

 このうち10頭が原発事故の1年後から、体に白い斑点が出るようになった。国の調査では、原因は明らかになっていない。原発事故後に急増した子供の甲状腺異常と同じで、国は原発事故との関係を認めたがらないのだ。

 だが、牛たちが放射能に汚染された牧草を食べ続けたことは、はっきりしている。

 原発事故から間もない2011年5月、国は菅直人首相名で「牛を福島県外に出してはならない」とするお達しを出している。だが吉沢さんと松村さんは政府に直接牛を見てもらおうと、トラックに乗せ農水省と環境省を訪れた。

警察は牛をトラックから降ろさせまいと懸命だった。右端の赤い帽子を被っているのが吉沢氏。=霞が関 写真:田中=

警察は牛をトラックから降ろさせまいと懸命だった。右端の赤い帽子を被っているのが吉沢氏。=霞が関 写真:田中=

 農水省では技官らが対応した。中谷誠・研究統括官が牛の間近まで行った。原因究明を求める吉沢さんらに中谷統括官は「冬毛に代わるまでステップを踏んで観ていきたい」と繰り返した。

 白い斑点が出るようになってから牛はすでに2回も冬を越しているのだ。今になってなぜ冬毛に代わるのを待つのだろうか? 素人が考えてもおかしな理屈だ。

 福島県によると、警戒区域にいた牛3,448頭のうち3,447頭が国の指示で殺処分(餓死も含む)された。現在640頭が飼育されている(計算が合わないのは妊娠中の牛の出産、自然交配で増えたため)。

 「牛が被ばくしたという生きた証拠を残すため国の殺処分指示には従わない」、吉沢さんは抗議の姿勢を示した。「棄畜の次に来るのは棄民だ」、霞が関一帯に響き渡るような声で叫んだ。
 
  《文・田中龍作 / 武藤凪》

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