311前であれば、それは不可解な光景だった。東京都知事選挙で自民党と公明党が支援する舛添要一・元厚労相が20日、日本最大の労働組合・連合を訪問したのである。
福島の原発事故により、連合のヘゲモニーを握っているのが電力総連であることが注目されるようになる。舛添氏が足を運んだ「連合東京」の大野博会長は東電労組出身だ。
「脱原発」を打ち出している宇都宮氏、細川氏が、東電の大株主である東京都の知事になると、連合には不都合である。だが原発再稼働について言葉をあいまいにしている舛添氏とは利害が一致する。舛添氏と大野会長のツーショットは、実はごく自然な光景なのである。
舛添氏は大野会長はじめ連合東京の幹部に会うと、愛想笑いを浮べながら へり下った。
「私は東大法学部を出ているが、労働法は勉強していなかった。厚労大臣になって労働法を勉強し直した。知事になって政策を進めるうえで知らないことは一杯あると思う。現場でご苦労なさっている皆さんと定期的に協議の場を持って虚心坦懐にご意見を賜って良い都政にしたい」。
要は “ 東大法学部を出ている私に労働問題を教えて下さい ” ということだ。こうまで頭を下げられれば労働組合の幹部も悪い気はしないはずだ。舛添氏は「雇用を守る」政策協定を連合東京との間で結んだ。
囲み記者会見で、筆者が原発政策について質問すると舛添氏は目をむいて怒った。「あなただけが記者会見を独占しちゃだめですよっ」と語気も荒く。
マスコミ記者が原発政策に関して質問しないから筆者が聞いただけなのだが。
舛添氏の雇用政策も大いに気にかかる。安倍政権は労働法制の緩和を進めている。連合は雇用を守る立場だ。舛添氏は難しい立場に置かれることになる。
筆者は今度はヤンワリと尋ねた。「舛添さんは(連合と自民党の)板挟みになりませんか?」と。舛添氏は次のように答えた―
「私は厚労大臣としてキチンと仕事をした。労働法制の緩和は全部間違っているわけではなく良いところもある。“ 恒産なければ恒心なし※ ” ということですよ」。
大企業の正社員が組合員である連合と舛添氏は、“恒産ある”所で意見が一致したのだろうか。(※「定まった財産や職業がなければ、定まった正しい心を持つことはできない」という意味。孟子。)
舛添氏はかつて競走馬「アトミックサンダー」を所有していた(Wikipediaより)。アトミックサンダーは、名馬「トウショウボーイ」を祖父に持つ。1999年に舛添氏が都知事選に立候補する際手放した。よくよくアトムと都知事選は縁があるようだ。
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