改正生活保護法が今年7月から施行される。生活保護予算の1割削減を大前提としているため、改正(改悪)法では保護申請のハードルを上げている。「親族の扶養義務強化」や「書類提出義務化(特別な事情がある場合を除く)」がそれだ。申請者にはやたらと厳しくなった。
改正(改悪)法施行後は申請者を役所の窓口で追い返す「水際作戦」の強化が懸念される。親族に迷惑をかけたくないため申請を断念するケースが増えることも危惧される。このため参議院厚生労働委員会では次のような附帯決議をつけた―
・水際作戦はあってはならないことを、地方自治体に周知徹底すること
・扶養義務の履行が要保護認定の前提や要件とはならないことを明確にする
だが、これら附帯決議は財政事情の厳しい自治体にとっては空念仏にさえなっていないのが実情だ。
区役所・市町村役場に行けば住民票などの申請書類は窓口に置いてあり、誰もが手にすることができる。ところが生活保護の申請書類は手の届かない場所に置かれていて、窓口の役人は文句をつけてなかなか渡さない。
扶養義務の履行を絵に描いたように強化しようとしているのが大阪市だ。親族の収入に応じた「仕送りの目安」を一覧表にしたのである。(例:年収500万円の場合2,000円~2万7,000円 / 年収800万円の場合8,000円~4万3,000円など)。「扶養の可視化」とも言える。
水際作戦ともあいまって申請者に対する嫌がらせは酷くなる一方だ。
これでは「真に保護を要する人々が排斥される」―事態を憂慮した弁護士やNPO代表らがきょう、厚労省に改善を要請した。(主催:生活保護問題対策全国会議)
厚労省は社会・援護局保護課が対応した。生活保護問題の経験豊かな弁護士らが実例をあげて追及しても返答は「ご主張は分かります」「ご意見はお伺いしました」…の連続だ。“ 木で鼻をくくったような ”とはこのことだ。
申請書類が手の届かない場所に保管されていることについて追及されると、厚労省は「“ 置くな ”とも“ 置け ”とも言ってない」と答えた。開き直りである。
きのうの経産省も酷かったが、きょうの厚労省も酷い。行政は誰のためにあるのだろうか? 国民のために仕事をするのが公僕ではないのだろうか?
「厚労省は建前では申請権を侵害してはいけないと言っておきながら、本音では“水際作戦 ”を温存したいと考えていると思わざるを得ない」。生活保護問題対策全国会議・事務局長の小久保哲郎弁護士は憤った。