テント、布団、毛布、ガスコンロ、鍋……公園に並べられた家財道具が12月の穏やかな陽差しを浴びている。
大晦日のきょう、野宿者と支援者たちは昼食に「ぶっかけ丼」を共同炊事して食べた。夜は年越しソバを調理する予定だ。
野宿者たちが年を越すために公園に集まるのには理由がある。年末年始は日雇いの仕事がなくなり、社会福祉事務所も閉まる。地下街からもシャットアウトされる。
空腹を満たし冷たい夜露をしのぐには、身を寄せ合って炊事をし、テントを共有する他ない。それらは「越年越冬闘争実行委員会」などに寄せられたカンパや支援物資で賄われるのだ。
いつでも誰もが路上に弾き出される
「アベノミクスで株価は上昇」「有効求人倍率は増加」などと世間知らずのマスコミは、はしゃぐ。株価が上がって潤っているのは一部の金持ちだけ。有効求人倍率が上がったと言っても、不安定雇用が増えているだけだ。
働き方が不安定になれば居住も不安定になる。リーマンショックに見舞われた2008年暮れ、別の公園でこんなケースがあった――
若い男性が炊き出しの列に並んでいる。30歳になったばかりだ。学校を卒業して就職した会社の労働条件が酷かったため、転職した。ところが転職先の会社は倒産した。派遣社員になったが、それもなくなり、日雇いで食いつなぐようになった。年末年始は日雇いの仕事もなくなる。ネットカフェに泊っていたが持ち金も底をついた。
男性のケースはいつでも誰でも路上に弾き出される可能性があることを教えてくれる。
来年は労働者派遣法の改悪により雇用はさらに不安定になる。正社員でさえも失業者予備軍となるのだ。もちろん派遣労働者は簡単にクビを切られる。
「野宿者を創り出しておいて、野宿者を痛めつける」。渋谷越年越冬闘争委員会のある委員は憤る。30日未明の強制排除は、その構図を絵に描いたようだった。
この原稿を書いている時点(31日午後4時30分現在)では、行政からの「公園退出要請」はない。
「まだ安心できない。きょう、明日は(強制排除が)ないといいね。せめて年越しくらいは…」。前出の委員は祈るような表情で話した。