渋谷区が警察に要請して越年のため集まっていた野宿者と支援者を宮下公園から力づくで排除した。きのう深夜からきょう未明にかけてのことだ。
強制排除されたのは野宿者4~5人と支援者10数人。制服警察官約50人による排除が始まったのは、きのう午後10時30分頃からだ。
陣頭指揮にあたった渋谷区土木清掃部の黒柳部長は、排除の法的根拠は「都市公園法に基づく(渋谷区の)公園管理権」と説明した。「3日まで宮下公園を閉鎖する」という。
野宿者に“宮下公園から出るように”と通告したのは(午後)8時30分だった。警察による強制排除のわずか2時間前だ。テントやフトンなどの家財道具を運び出せるわけがない。
応援に駆け付けた支援者たちと警察官が揉み合いになる場面もあった。最後の一人が公園から出たのは、きょう午前0時20分頃だった。
厳寒のなか寝場所を奪うことに「人殺し行政ではないか」と支援者が黒柳部長に詰め寄った。黒柳部長は「荷物(家財道具)は追って取り出せる」と答えた。
役人だ。やはり分かっていない。家財道具はあっても寝場所がなければ、人は生きてゆけないということを。行政が駅の通路や公園から野宿者を追い出しているため、寝場所を確保するのは至難の業になっているのだ。
排除された野宿者の中には28日に路上で倒れて頭を強く打ったため、渋谷区役所に保護を求めに行ったが門前払いされた男性もいる。男性は頭がい骨にヒビが入っていた、という。
年末年始は役所が閉まり、医療保護や生活保護の申請ができなくなる。このため厚労省は「生活困窮者に対する年末年始の緊急一時的な宿泊場所の確保」について全国の自治体に通達を出しているのだ。
渋谷区は決して温かいとは言えない厚労省が出した通達にさえ違反していることが明らかになった。
渋谷区に電話したところ、警備会社の警備員が応対した。「職員はいない。緊急に伝える窓口はない。区役所の上の人も知らない。1月6日に書面で提出する事になっているので伝えたいことがあれば言ってくれ」とのことだった。
渋谷区は2010年、宮下公園を多国籍企業ナイキの事業に使わせるため、野宿者を強制排除した。今回排除されたのは、公園内のナイキが使っていないスペースである。
公園はいったい誰のためにあるのだろうか。渋谷区は企業に優しくても弱者には血も涙もないようだ。