米原子力規制委員会(NRC)のグレゴリー・ヤツコ前委員長が来日、きょう都内で講演した。
ヤツコ氏は福島原発事故を受け、規制を強化しようとして原子力規制委員会内で孤立、昨年5月委員長を辞任した。(wikipedia等より)
原発を売りつけた国の苛酷事故を目のあたりにし、自説を曲げなかったヤツコ氏の話は示唆に富んでいた。( 太字がヤツコ氏の発言)
驚いたのはヤツコ氏が脱原発に大きく踏み込んだ発言をしたことだ―
「日本に来る度に人々のスピリットとテクノロジーに驚かされる。次世代のエネルギーや新たな送電システムを作ることができると思う。そうすれば高価な施設を必要とする原子力を使わなくてもよくなるだろう。苛酷事故を起こすような技術(原子力)を使わずに済むようになるだろう」。
原発安全神話は日本だけに限らずスリーマイル事故を経験した米国にもあった。従属国の日本も神話にかぶれていった―
「原子力業界は『全ての原子力発電所は安全だ、事故は起こらない』と言い、事故が起こると改善をしようとする」。「事故が起こると大騒ぎになるが、事故は起こるものだという理解を持って始めなくてはならない。将来のある時点で事故は起こるものだ」。
日本ではチェルノブイリ事故ばかりがクローズアップされ、スリーマイルの教訓が学ばれなかったようだ―
「スリーマイル島原発事故では、避難計画が非常に脆弱だという事が分かった。(にもかかわらず)福島原発は(スリーマイルの)重要な教訓を学ばなかった。避難は非常に混乱を極め、事前に十分な計画がなかった」。
「福島原発事故を受けて新しく打ち出すべき安全基準とは、避難者が一人でも出てはならない、ということだ。発電所設備の外を汚染してはならない」。
この他、ヤツコ前NRC委員長は「市民が議会や行政に働きかけて行くことも大事だ」と強調した。
質疑応答で筆者は「日本政府が汚染水問題を過小評価していることをどう考えるか?」と質問した。前NRC委員長は次のように答えた―
「東京電力には対応する能力がないのではないかという懸念をますます高めたのではないか。なぜ政府がもっと早くから関与しなかったのか?再稼動の方にばかり関心を払いすぎていた」。
『前』NRC委員長となったゆえ大胆な発言ができるのかもしれないが、日本の原子力規制委員会の田中俊一委員長は退任後、福島の事故について何と語るだろうか。
ヤツコ氏は明日(24日)、日本外国特派員協会(FCCJ)で講演と記者会見を行う。