【大阪報告】 元慰安婦「着いたのは戦場の遠い暑い国だった」

「私たちのような人を二度と出さないように」と訴える金 福童さん(右)と吉 元玉さん。=25日、大阪天満橋 写真:田中龍作= 

「私たちのような人を二度と出さないように」と訴える金 福童さん(右)と吉 元玉さん。=25日、大阪天満橋 写真:田中龍作= 

 「橋下市長のパフォーマンスに利用されたくない」として面談をキャンセルした元慰安婦の韓国人女性が、きょう、大阪市内で証言集会を開いた。

 2人のハルモニ(お婆さん)は満場の中拍手で迎えられた。2人とも韓国伝統のチマ・チョゴリを現代風にアレンジした服装で登場した。

 始めにマイクを握ったのは金福童(キム ボクトン・88歳)さん。金さんの次に吉元玉(キル ウォノク・86歳)さんが話した。金さんは自らの体験を詳細に、吉さんは自らの体験には触れずひたすら平和、世界に遍在する戦時性暴力に対する解決を訴えた。
 
 金福童さんは、連行された時の様子を鮮明に覚えていた。日本の徴用に行かなければ、日本に反逆したと全財産を没収され追放される状況下だったという。

 「満14歳の時、軍需工場に行くと言っていたのに、着いたのは日本ではなく戦場、遠い暑い国だった。そこで私は日本軍の奴隷となった。台湾を始め、中国の広東に着いた時は陸軍の軍医が身体を調べた。そこでは何人入るのか知っていて、私達の部屋が用意してあった」。

 金さんは広東から、香港、マレーシア、スマトラ、ジャワと軍の移動と共に戦場を転々とし、終戦をシンガポールで迎えた。

 シンガポールの陸軍病院に着くと、看護婦の訓練をさせられた。負傷した軍人を手術するのに血液を提供させられたこともあったという。いつのまにか日本兵たちはいなくなり、米軍によって収容所に入れられ調査を受けたという。

 「祖国に帰っても、数十人の軍人を相手にしていたことを誰にも言えず、自分の胸だけにしょいこんで生きてきた」と金さんは語った。金さんは、「日本政府が間違っているというのではない。過去の政府の間違いを安倍さんが清算しなければならない」、と述べ、「正しく受け止め、清算してほしい」と訴えた。

会場外では在特会(交差点向こう)がヘイトスピーチを続け、カウンター有志がそれを制止した。=写真:田中龍作=

会場外では在特会(交差点向こう)がヘイトスピーチを続け、カウンター有志がそれを制止した。=写真:田中龍作=

 橋下発言について、金福童さんは最後のフリートークで、「頭がおかしい、とんでもない人。妄言を言う人がどうして市長をすることができるのか不思議でしょうがない。政治家の服を脱いで」と厳しく批判した。

 金さんは両手をあげて「ハシモト、ムロナガラ!(韓国語で退陣せよの意)」と叫びながら退場した。来日後も続いた橋下市長の発言に傷ついた金ハルモニのせめてもの抵抗なのかも知れなかった。

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