「新自由主義」と「成果主義」と「労働力の流動化」。米国流の強欲資本主義が日本の大学で猛威をふるっている。雇用不安にさらされる大学の非常勤教職員たちがきょう、国会内で雇用の安定を求める集会を開いた。
組合によれば非常勤講師の4割以上は年収250万円以下。複数の大学にまたがって講座を六つも七つも掛け持ちしてやっとこさ食べてゆける状態だ。そんな彼らを営利至上主義の大学経営側がさらに追い詰めようとしている。
労働契約法の改正により、5年を超える有期契約が繰り返された場合、労働者は申し出により無期雇用に切り替えることができる。4月1日からの施行を前に5年で雇止めにしてしまおうという動きが大学経営側にある。
所沢市に住むある非常勤講師(40代・男性)は8大学の9講座で福祉論を教える。「5年を超えるとその分野で信用がつき講座が増える。なのに5年で切られたら講座は増やせない。収入に響く」。
雇止めにされれば講座は増えないばかりか、めっきり減る可能性がある。非常勤講師は冷静な口調の中にも憤りを込めて話した。
大学側の動きに対して教職員組合は国会を巻き込んで「雇止め」の撤回を求めている。
首都圏大学非常勤講師組合の志田昇委員長が現状を明かす―
「いままでは10年、20年と同じ大学に勤めていた。関係ない話だと思っていたが、昨年大阪大学が5年雇い止めを打ち出して、これは大変だと一斉に各大学に申し入れした。国立大学はほぼ(雇い止めの)上限をつけるのを阻止できたが、大阪大学と神戸大学が撤回していない」。
関西はどうだろうか。関西圏大学非常勤講師組合の新屋敷健さんは次のように話す―
「日本の大学で一番悪質なのは大阪大学。学内説明会など一切なく、新しい就業規則を作った。労働基準法第90条(就業規則変更)違反で労基署に告発を考えている」
非常勤教員よりもさらに劣悪な労働環境に置かれているのが、事務職などで働く非常勤職員だ。勤続27年という女性に聞いた―
「大阪大学の事務職員の半数は非常勤職員だが、大学は2015年に長期非常勤職員を全員解雇する方針を固めた。対象は200人になる。
大阪大学では9割の非常勤職員が手取り200万円を切る。時給制で交通費は時給に含まれる。教職員組合もあるが組合内でもヒエラルキーがある。私たちは最下層。自分たち数名は組合を飛び出して地域の労組に入った。大阪大学で就業規則を作成したのは小泉・竹中時代の規制緩和論者、小嶌典明教授だ」。女性は切々と訴えた。
理工学系の研究所では、成果が芳しくないと思われる研究者はバタバタと切られ、失業しているという。
かつては思想信条の自由を守る砦として政治権力と戦ってきた大学。今や拝金主義にまみれ、労働法制緩和のお先棒を担ぐ御用機関に堕してしまったようだ。
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相棒の諏訪都記者は、通訳で渡航するため7月半ばまでお休みします。