夏休み最後の再稼働反対集会となった今日、首相官邸前と国会議事堂前の歩道はいつものように、原発に危機感を抱く市民で一杯になった。首相問責で国会が動かなくなっているにもかかわらず、野田政権と最大野党の自民党が「原子力規制委員会」の人事案をあの手この手で通そうとしているからだ。
「人事案反対!」「田中(俊一)は辞めろ!」…シュプレヒコールにホラ貝の勇壮な音色が混じった。「ボー・ボー」。その昔、ホラ貝は戦(いくさ)の陣ぶれで鳴らすものだった。
吹いているのは大田区在住の男性(会社役員・60代)である。「原発を再稼働させた政府と国民の戦いだ」。男性は目を吊り上げて語った。3人の孫がいる。ホラ貝は政府に戦(いくさ)を挑むために習い始めたという。「孫たちのために何としてでも原発を止める」と力を込めた。
“子や孫の世代に危険な原発を残してはならない” 金曜集会はここに来て原点回帰した感がある。「子供を守れ!」のシュプレヒコールが目に見えて多くなった。
和歌山から飛行機で駆け付けたという男性(50代)は学校教員だ。「子供の時に大人に“なぜ戦争を止めようとしなかったのか?”と聞いた。今度子供たちから“なぜ原発を止められなかったのか?”と聞かれないようにするために来た」。
参加者の多くは子供のために「何とか原発を止めよう」と懸命だ。
国会議事堂前のステージで大人顔負けの堂々としたスピーチをしているのは、三鷹市の小学校3年生(男子・9歳)だ。
「野田総理と政府は放射能のためにどれだけ多くの人が苦しんでいるか分かっていません。こんなことはありえません。豊かな自然に核のゴミを捨てるのは犯罪です。生き物は死んだら星になります。星になる前に殺すのは犯罪です。皆さん、約束して下さい。原発がなくなるまで反対運動を止めてはいけないのです」。
男の子は生きとし生けるものの摂理をごく自然に話しているに過ぎないのだが、負うた子に教えられたようで筆者は恥ずかしくて仕方がなかった。人間の心を失った原子力村の面々が、もしこのスピーチを聞いたらどう思うだろうか。
《文・田中龍作 / 諏訪京》
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