【解説】スリランカ内戦とは何だったのか

 スリランカ内戦はまるで絵に描いたような少数民族と多数民族との戦争だった。少数派のタミル人は、全人口(2千万人)の2割足らずでヒンドゥー教徒。多数派のシンハラ人は全人口の7割以上を占め、ほとんどが仏教徒である。

 スリランカは1948年、英国の自治領として独立した。72年に新憲法が制定されると両民族の対立が表面化した。急進的な仏教徒の支援を受けた政権が、仏教を準国教としシンハラ語を国の唯一の公用語と定め、軍隊、警察をはじめとする行政組織をシンハラ人で固めた。

 さらにはシンハラ人をタミル人の郷土とも言えるジャフナ県に入植させる政策を進めた。3世紀頃、インドから渡ってきたタミル人が最初に住み着いたのがジャフナ県だ。徹底したシンハラ人優遇政策のためにタミル人の失業者が増大した。

虐げられたタミル人たちは民族自決を強く希求するようになる。76年、民族独立を目指す反政府武装組織LTTE(タミル・イーラム解放の虎。通称タミル・タイガー)が結成された。

 83年、タミル・タイガーがジャフナ県に駐留していた政府軍兵士13人を殺害すると、報復に出たシンハラ人は全国各地でタミル人を殺した。パゴダ(仏塔)の前にタミル人を集めて焼き殺す事件があちこちで発生したスリランカは一気に内戦に突入していった。

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自爆テロを決行した少女の遺影(タミル・タイガー政治局・キリノッチ県で。写真:筆者)

  タミル・タイガーは政府軍と比べると兵力は20分の1、武器も旧式だ。にもかかわらず互角かそれ以上の戦いを展開できたのは、野戦に長けていたからだった。ジャングルや海辺のマングローブ林はゲリラ戦に持ってこいの環境だった。

 自爆テロを戦術に用いたのはパレスチナのハマスよりも古い。爆薬を積んだ小型ボートで政府軍艦船に体当りする「タミル・タイガー海軍」は恐れられた。

 2002年にノルウェーの仲介で停戦するまで、タミル・タイガーは国土の3分の1を支配するに至った。

 精強を誇った頃である。だが、要人への自爆テロ攻撃は、国際世論の批判を浴び次第に孤立するようになる。91年、インドまで出かけてラジブ・ガンジー元首相を暗殺。99年にはクマラトゥンガ大統領を負傷させた。同大統領の父と夫はタミル民族との融和に身を捧げた人物だ。タミル・タイガーは闇雲な自爆テロ攻撃に走っていた。

 タミル人の子供を拉致し少年兵として使うことも国連などから強く非難された。何より子供を奪われた親の怒りは測り知れないものがあった。

 タミル人漁師はタミル・タイガー海軍の武器・弾薬運搬を手伝う可能性があるとして、海岸線から1キロまでしか出漁を許されない状態となっていた。 
 タミル人の民族自決のために始めた内戦だったはずが、当のタミル人が疲弊してしまったのだった。ゲリラ戦争は人民の海を作り後背地を持つことが鉄則だ。ところがタミル・タイガーは内外で味方を失っていった。

 これでは亡命政府を受け入れてくれる国など現れるはずもない。頼みの綱としていた海外在住のタミル人からも送金も途絶えがちになっていた。国際世論もタミル・タイガーに批判的とあって、国連もEUも本腰を入れて停戦の仲介はしなかった。

 今回のインド総選挙を受けた新政権の発足までにタミル・タイガーを掃討してほしいとの要請があったとも伝えられている。ラージャパクサ大統領が軍事作戦を急いで強行した理由のひとつだ。スリランカ経済はインドに大きく依存するため、インドの意向は無視できない。

 自民族からはあいそを尽かされ、絶大な影響力を持つ隣国からは邪魔者扱いにされる。かくしてタミル・タイガーは壊滅に追い込まれたのだった。

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