「首都陥落」で必ずと言ってよいほど目にするのは、対戦国(内戦では反乱軍)の戦車や装甲車が乗り込んで来る光景だ。だが、クリミア半島の州都では少し様相が違う。
クリミア自治州の州都シンフェロポルでは、「クリミア軍」を名乗る民兵とロシア系住民が、ウクライナ軍基地を包囲し投降を迫っている。
ロシア軍がクリミア半島のウクライナ軍基地を実力で占拠している状況は、これまで拙稿で伝えた。ピレバルノイヤ陸軍基地(4日付け)、ベルベク空軍基地(6日付け)のケースを参照されたい。
さしものロシア軍も州都での実力行使には踏み切れなかったのか。シンフェロポルの街のど真ん中にあるウクライナ軍基地を包囲するのは、「クリミア軍」を名乗る民兵とロシア系住民だ。ロシア系住民はジュラルミンの盾と棍棒で武装している。
クリミア自治州のアクショーノフ新首相(ウクライナ新政権は認めていない)は、クリミア半島に駐留するウクライナ軍に対してクリミア政府のコントロール下に入るよう迫っている。事実上の投降勧告だ。
だが軍はキエフ(中央政府)に忠誠を誓っており、クリミア政府下に入れば軍規違反となる。簡単に投降勧告に応じるわけにはいかない。クリミア半島のウクライナ基地はいずこも同じ状況だ。
ウクライナ本土とクリミア半島を結ぶ幹線道路ではロシア軍がチェックポイントを設けており、通行車両を一台一台検問する。チェックポイントでの写真撮影は認められなかった。2~3カット撮ったところロシア兵が飛んできて「(撮影画像を)消せ」と命じた。
ネズミ一匹通さない検問下、ウクライナ軍は援軍も物資も送り込むことができない。海岸も空港もロシア軍の制圧下にある。ウクライナ軍は兵站を断たれてしまったのだ。無力化されたとも言える。
シンフェロポル基地の現状を見る限り州都は陥落したに等しい。ロシア軍の戦車や装甲車が州都になだれ込んで来たとしても、ウクライナ新政権に抗する術はなくなった。