反政府デモが続くトルコに昨夜(日本時間6日未明)、到着した。全土に広がる反政府デモの中心となっているイスタンブールのタクシム広場は、仕事を終えた人々が続々とつめかけ、サッカー場の何倍もある広場は老若男女で埋め尽くされた。ざっと1万人を超えるだろう。
広場入口には警察隊の侵入を防ぐためバリケードが築かれている。職場(銀行)の仲間と一緒にオキュパイに加わる女性(20代後半)は「タイープ(エルドアン首相)は辞任すべきだ」と高らかに叫んだ。
タクシム広場はカイロのタハリール広場、モスクワの赤の広場のように一国を象徴する空間だ。政教分離を掲げて近代トルコを建国したアタチュルクの旗を振りかざす参加者や売り子が目につく。
事の発端はタクシム広場に隣接するゲジ公園の再開発だった。行政がショッピングモールなどの建設のために樹木を伐採しようとしたことに市民が反発し、公園を占拠した。
警察隊が出動、催涙弾やゴム弾を発砲し鎮圧しようとしたが、火に油を注ぐこととなった。
背景にあるのは、イスラム化政策を進めるエルドアン政権への強い反発だ。トルコは国民の9割がイスラム教徒だが、原理主義と対極にある世俗主義である。飲酒も、公の場での異性への愛情表現も自由だ。
ところがエルドアン首相率いる与党AKP(公正発展党)はイスラム色が強く、先月、酒の夜間販売を禁じる法律を国会で可決させた。ジャーナリストへの対応も厳しい。アルジャジーラによれば、非民主的な手法の対テロ取り締まり法を批判する記事を書いた多くのジャーナリストが逮捕・投獄されている。
4日(日本時間)からは公務員労働組合(組合員24万人)も加わり、2日間続けて大規模ストライキを打った。
イスタンブールは東京、マドリードと共に五輪誘致に立候補している。警察隊がデモを強制鎮圧すれば、死傷者や逮捕者をさらに出すことになり、国際社会からの批判は免れない。かといって放置すれば政府の統治能力が問われる。
いずれにせよ反政府デモは、五輪招致を目指すエルドアン政権には困った事態となっている。
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関西の篤志家S様ならびに読者の皆様のご支援により、トルコ取材に来ております。