「小沢候補51ポイント、菅候補249ポイント」。民主党中央代表選挙管理委員会の小平忠正委員長が、かん高い声で党員・サポーター票を読み上げると、場内にどよめきが起きた。小沢一郎前幹事長の敗北がほぼ決定的になったからだ。
伯仲が伝えられていた国会議員票も小沢氏400ポイント(200人)に対して菅氏412ポイント(206人)と菅氏がリードした。地方議員票も加えた合計ポイントは小沢氏491、菅氏721。事実上の首相を選ぶ民主党代表選挙は菅代表(首相)の圧勝だった。
新聞・テレビによる連日の「反小沢キャンペーン」が効を奏したのである。「政治とカネ」は党員・サポーターの頭にすり込まれた。「強制起訴される首相でよいのか」と問われて、「別に構わない」と考える党員・サポーターは少ない。地方議員は来年4月に統一地方選挙を控えている。
民主党国会議員は自分の選挙を支えてくれている彼らから地元に帰る度に突上げられた。ある若手衆院議員(30代)に「新聞・テレビの『反小沢論調』は党員・サポーターに影響しましたか?」と聞くと「そりゃ影響しましたね」と顔をしかめた。
民主党国会議員4人を輩出する九州のある県ではこんな現象が起きていた。6月に行われた代表選挙では、小沢系の樽床氏を3人の議員が支持し、菅氏に投票したのは1人だった。ところが今回は菅氏3人、小沢氏1人となった。逆転である。
新聞・テレビは露骨なまでに「菅支持、反小沢」報道を繰り返した。ネットはその逆だった。菅首相の無為無策に悲鳴を上げる国民の声が飛び交った。それに比例して小沢待望論が湧き起こった。
こうしたメディア状況を踏まえ、小沢陣営はネットをもっと有効活用しなければならなかった。小沢氏が築地市場を歩いた11日のことだった。投票日のわずか3日前である。選対のある議員が「USTREAM始めましたからね」と誇らしげに言ってきた。手にはiPhoneひとつ。筆者は崩れ落ちそうになった。
iPhoneでは動いている被写体は捉えきれない。さらに屋外では音が割れて何を言っているのだか、さっぱり分からない。練り歩きなど動きがある場面でUSTREAMを利用するのであれば、ビデオカメラをPCの携帯端末につなぎインターネット回線に送り込むのが普通だ。iPhoneで屋外の歩きと声を伝えようなどとは無謀という他ない。手漕ぎボートで太平洋を横断するようなものだ。
霞ヶ関と利害を共にし、記者クラブ利権を固守せんとする新聞・テレビは小沢叩きに血道をあげた。小沢陣営が世論を味方につけ選挙に勝つにはネットを駆使する必要があった。メディア戦略に敗れたと言ってもよい。
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