日本の子どもの貧困率は15・7%(厚労省2009年調査)でOECD加盟国中でも高い水準にある。特に親が一人しかいない子どもの貧困率はOECD中、最下位だ。遺児の母親の勤労年収は149万円(あしなが育英会調べ)という低さである。
貧しい家庭の子どもが就学を諦めたりしなくても済むような制度の拡充が急がれる。その基になる「子どもの貧困対策法」が、国会で大詰めを迎えている。
現在、数値目標をめぐって野党と与党・厚労省とがせめぎあっている。数値目標とは、例えば「子どもの貧困率を何年までに10%以下にする」などと法律に書き込むことだ。野党が要求しているが、与党・厚労省は消極的である。
数値目標がなければ、「原発事故・子ども被災者支援法」と同じく空念仏となる。社会福祉政策への出費を一円でも減らしたい厚労省の望むところでもあるが。
「子どもの貧困対策法」のしっかりした法制定を目指そうという集会がきょう、代々木公園で開かれた。(主催:なくそう子どもの貧困・全国ネットワーク / あしなが育英会 / 遺児と母親の全国大会実行委員会)
遺児家庭の母親である山本千賀子さん(北海道函館市)は、上の子供が小学2年、下が幼稚園の年長組の時に夫をガンで失った。山本さんは女手ひとつで子どもを育てる苦労を切々と語った――
「(世帯の)収入が途絶えたにもかかわらず、光熱費、家賃を払わなければならない。市営団地に申し込んだが外れた。探しても正規の仕事はなく、やっと歯科衛生士のパートが見つかった」。
「いろんな環境で育った子どもが平等でありますように“子どもの貧困対策法”の制定を強く願っております」。山本さんは祈るような表情で訴えた。
岐阜県の高校3年生、藤井あずささんは5歳の時、父親が不治の病に倒れた。以後通院が続く。一家6人を母親が支える。
「中3の妹は高校に行くつもり。父親の医療費がかかり母親の収入だけでは大学に行けそうにない。(しかし)進学せずに就職しようと思っても就職は難しく、今の貧しいままの生活になってしまう。両親を本当に楽にさせてあげるには大学を出て良い職について、貧しい生活から抜け出すのが第一歩なのではないでしょうか。一人でも多くの子どもが自分の夢を追いかけることができるような環境を作って下さい」。藤井さんは声を絞り出すようにして話した。
17日、政府は生活保護費を切り下げ、なおかつ生活保護申請を絶望的なまでに難しくすることなどを盛り込んだ法案を国会に提出した。参院選を間近に控え「子どもの貧困対策法」はカモフラージュにも見える。
「原発事故・子ども被災者支援法」と同じく議員立法であることから、「子どもの貧困対策法」は政府の手厚いバックアップを得にくい。しっかりとした予算措置を伴った制度でなければ貧困は連鎖する。子どもの顔が暗い国に未来はない。