東電福島第一原発が吐き出す放射能を逃れて避難生活を続ける人々がきょう、都内で集会を開いた。
東電の補償は遅々として進まず、借り上げ住宅も大方、来年3月31日まで。行政はあの手この手で避難者を福島に連れ戻そうとする。「泣き寝入りしてはならない」。法律家たちが避難住民の相談に乗った。(主催:東京災害支援ネット/ きらきら星ネット / 福島原発被害首都圏弁護団)
福島市から2人の子どもを連れて練馬区に避難してきた母親(30代)は、東電に賠償請求を出すのをためらっている。「追加請求が出た場合、新たに請求することができなくなるのではないか?」と懸念しているのだ。
弁護士は「追加請求できます」と答えた。そのうえで「請求権保留文書(※)を添付する」「東電の書類にある“合意します”を二重線で消しハンコを押す」と具体的な方法をアドバイスした。
いわき市から2人の子どもと共に避難している女性は次のように相談した―
「夫が東京で就活している。もしこちらで仕事が見つかったら住民票を移さなければならない。そうなると今受けている医療費無料の健康診断などが心配だ」。
弁護士の答は「住民票を移すと受けることができなくなる」だった。福島県の事業だからだ。弁護士は「国の政策として実施するように要求することが大事だ」としながらも「福島県にしばり付けようとしている」と話した。
他にも福島県に連れ戻す政策としては、家賃補助がある。例えば、避難地域に指定されている●●町から東京都内に避難しているAさんがいるとする。Aさんが福島県内でも線量の比較的低い■■市に住めば、家賃を補助するのである。避難者の経済的困窮につけ込む汚い手口だ。
郡山市から江戸川区の実家に2人の子どもと避難している女性は、現在妊娠5ヵ月だ。夫は仕事の都合で郡山市に住む。
身重の彼女と2人の子どもは今月一杯で郡山市に戻る。子どもは「パパと一緒がいい」と言い、夫も「子どもと一緒に暮らしたい」と言うからだ。実家が子ども3人(彼女が5ヵ月後に産む子を合せて)の面倒まで見きれないことも大きな理由だ。
「自主避難者にも十分な支援があれば、こっち(東京)で産み、皆で一緒に暮らしたい」。彼女は切々と話した。
避難者たちが求めているのは人間としての普通の暮らしだ。高望みなどではない。原発事故さえなければ、東電と国がまともに対応していれば、皆静かに暮らしていたはずだ。補償の財源はある。東電の昇給や不毛な除染に回すことを止めれば解決できる問題なのである。
原子力賠償紛争解決センターへの申し立ては5,801件(3月15日現在)で、うち和解できたのは2,408件。約3,000件が未解決だ。取下げは477件、打切りは363件にも上る。
東京災害支援ネットの弁護士によれば「(補償は)東電が応じない限り解決できない。被害者が説得されることになりかねない」。
主催者はきょうの集会で語られた避難者の窮状を文字に起こして復興庁に届けることにしている。
《文・田中龍作 / 諏訪都》
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※請求権保留文書
東京災害支援ネット(とすねっと)のHPからダウンロードできる。