「韓国人を叩き出せ」「竹島を返せ」…エセ右翼たちの怒号が買い物客などで賑わう大久保通りに響いた。
韓国料理店や韓流スターのポスターを貼った土産物店などがびっしりと並ぶ大久保通り。きょう午後、日の丸や旭日旗を林立させた一群が前後左右を機動隊に挟まれながらデモ行進した。100人余りはいただろうか。
「日本から出て行け」「パチンコ屋はやめろ」などは序の口だった。「韓国人を射殺しろ」「ソウルを火の海にしろ」…エセ右翼たちは民族差別を極めた汚い言葉をコリアタウンで吐き連ねた。「竹島の日」とされる22日が間もなくに迫っているため、今日は特別気合が入っていたのかもしれない。
ドイツ、イギリス、カナダなどでは、公共の場でヘイトスピーチをすることは法律で禁じられている。懲役刑もある。ところがエセ右翼によるデモは、大久保・コリアタウンで日曜恒例となりつつある。国際社会から「日本は恥ずかしい国」と言われても返す言葉がない。
救いもある。「民族差別を許してはならない」とする有志たちが立ち上がったことだ。彼らはツイッターで呼びかけ合い、エセ右翼のカウンターとして大久保通りに集まった。
『仲良くしようぜ』『みんな仲間』『悲しい差別はもう止めよう』などと書いたプラカードを持ち寄って、歩道の両側からかざした。エセ右翼が大久保通りに差し掛かかる頃、カウンターの有志たちは50人近くにまで増えた。
日本に来て2年になる韓国人留学生が沿道からデモを見ていた。「ここまで酷いレイシズムはかつてなかった。(日本政府が)今日まで放置してきたからこうなった。日本人がカウンターデモを行ってくれたことは凄く意味がある」。韓国人留学生は厳しい表情で語った。
「在特会の排外主義はかねてから知っていたが、そこに住んでいる人を直接攻撃してはだめだ。ちょうど東京に用事があったので参加した」。こう話すのは名古屋から駆けつけた大学職員の男性(40代)だ。
乳母車を押して参加した母親(40代)もいる。「放っておくことはできないと思って来た。放っておくとどんどん酷くなる。エスカレートさせてはいけないという思いで来た」。乳母車には『仲良くしようぜ』のプラカードが貼られていた。
日本は国連人種差別撤廃条約(1965年)に加盟しているが、ヘイトスピーチを取り締まる国内法が存在しない。先進国の一員として信じられないが、現実である。
「彼らは愛国者なんかじゃない。単なるレイシストだ。自分も参加していたTPP反対デモで見かけた顔がいたのは残念だった」。都内在住の会社員(40代男性)は感慨深げに語った。一緒に戦っていた仲間が向こう側へ行ったことへの衝撃だ。
《文・田中龍作 / 諏訪都》