午後6時、大阪中之島は関電本店通用門前―
「八木(関電社長)許さん。目の前に野田(首相)がいたら、頭かち割ったる。野田、八木しばいたろか」、「再稼働反対、大飯を止めろ…」。怒号とシュプレヒコールが響くなか、関西電力の社員たちはビルから吐き出されるように一斉に退勤してゆく。
約2千人の参加者は銘々に持参した鳴子やカスタネットを打ち鳴らした。自転車発電でスピーカーを鳴らすエレキベースの音が賑やかさを掻き立てる。まるでカーニバルのノリだ。
主催者(Twit No Nukes 大阪)の一人から「大阪の(集会)は迫力がある」と聞いていたが、想像をはるかに超えていた。原発再稼働に抗議する大阪集会が本格的に始まったのは今年4月。金曜集会発祥の地である官邸前の翌月である。熱気は発祥の地以上だ。
現在、この国で原発を動かしている唯一の電力会社である関電への凄まじい怒りが、迫力を産むのだろう。関電はこの夏、電気は足りていたにもかかわらず、「足りない」「工場が止まる」「医療機器が止まれば人命にかかわる」などと騙って庶民を脅した。こうしたことも怒りに拍車をかけた。
妊娠8か月(2人目の子供)のお腹を抱えながら参加した女性(大阪市西成区在住)は「関電には怒りを通り越して呆れる」と切り出すと、とつとつと話を続けた―「西成のスーパーで売っている野菜は福島産がやたらと多い。2人目を作るかどうか躊躇した」。
通用門前から正門前に回ると様相は一変する。子供たちが黄色の紐を次から次へと正門の柵にくくりつけた。黄色は反核カラーだ。
福島県湖南町から母親と共に参加した女の子(11歳・小5)は、一本の紐を巻くのに結び目を20個も作った。「原発止まってほしいなあ。紐が絶対外れんよう」。
子供ばかりでなくオッチャンやオバチャンも黄色の紐を柵に結び付けていった。無数の紐が夕風にそよいだ。
「止めて下さい」と言ってくる関電社員にオバチャンたちは「原発やめたら(紐を結ぶのを)やめたるわい」と言い返した。正門前には大飯原発の“遺影”も飾られ、僧侶が鉦を鳴らした。「関電、原発と共に成仏せえよ」、オッチャンの野太い声が、巨大な本店ビルに突き刺さるように響いた。
大阪の反骨精神とユーモアがある限り、脱原発運動は強く、しなやかに続きそうだ。
《文・田中龍作 / 諏訪都=京改メ》
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関電正門側の抗議行動(写真も含む)は、「Twit No Nukes 大阪」の主催ではありません。
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