東海地震の震源域で活断層のすぐ傍に建つ、日本で一番危ないと言われる浜岡原発。その“お膝元”で住民たちが立ち上がった。『浜岡原発の再稼働の是非を県民投票で決める条例』の制定を求める署名運動が、今日から始まった。(主催:原発県民投票・静岡)
静岡県内有権者の50分の1を超える署名が集まれば、川勝平太知事は議会を招集し審議しなければならない。(地方自治法第74条=条例制定の請求)。静岡県の有権者数は307万7千人強だから6万2千筆の有効署名が必要となる。
静岡県は県の3分の一が浜岡原発から50キロ圏内にすっぽりと入る。近い将来発生が予想されている東海大地震が起きれば道路、新幹線ともに使用できなくなる。そこに原発事故が重なれば、住民は逃げ場を失い大惨事となるのは必定である。
署名運動初日のきょう、静岡市の繁華街に設けられた会場を取材した。東京の署名運動初日と比べても出足は順調のようだ。買い物に訪れた住民が次々と自分の住所と氏名を書き、拇印を押していた。
「浜岡原発の怖さをこれまで実感していなかったが、福島の事故を機に考えが変わった。9月に生まれる孫のことを思うと、再稼働は反対。」(主婦・60代=静岡市内)
「原発が近いので心配していた。息子の学年には白血病の子供が2人、私の知人には甲状腺ガンで手術した人が少なくない。原発で働く人が多いので、“原発反対”を口にするのは難しいがそんなことを言ってる場合ではない。もし事故が起きたら行く所はない。再稼働は絶対反対」(浜岡原発から10キロ圏内の牧之原市在住=自営業の女性・50代)
原発再稼働に反対する意見が多かったが、「政治家と電力会社に任せず、自分たちで決めたい」として署名する有権者も目立った。署名を集める受任者(50代・会社員)の話が象徴的だ――
「若い人の反応がよい。最初は(請求に必要な)6万人集めるのは無理かなと思っていたが、これなら行けそう。旧来の原発反対運動や労働組合頼りではなく、若い人が(署名に)参加している。これを皮切りに(脱原発の気運が)広がっていくといい」。
静岡に限らず原発の安全対策は、これまで行政に“お任せ”だった。だが、東京と大阪で市民団体が「原発稼働の是非を住民投票で決める条例」制定の直接請求を知事と市長あてに起こしたのである。静岡がこれに続き、さらに7月には新潟で「条例制定」の署名運動が始まる。
《文・田中龍作/諏訪京》
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