
【建国記念文庫の森=Before】ユンボが入っているとはいえ、森は深閑としていた。=2023年9月、外苑 撮影:田中龍作=
伐採が進む神宮外苑を訪れた。覚悟はしていたが、ここまで無残な姿になっているとは予想だにしていなかった。
ここには神秘の森があったはずではなかったか。
鬱蒼とした森に足を踏み入れると真夏でも冷たい風が吹いていた。迷い込んで出て来れなくなるのではないか、と思うほど巨木古木がびっしり立ち並んでいた。
それが「禿げ山」ならぬ「禿げ森」にされていた。外苑再開発の核心部分がこの建国記念文庫の森なのである。

【建国記念文庫の森=After】伐採されてスカスカとなった森。神宮球場まで突き抜けて見える。=22日、外苑 撮影:田中龍作=
UNESCO(国連教育科学文化機関)の諮問機関であるイコモスはヘリテージ・アラート(2023年9月7日発出)で次のように警告する―
外苑全体で 3,000 本以上の樹木が破壊され、そのうち 500 本以上が樹齢 100 年以上、さらに 500 本が樹齢 50 年 以上と推定される。
酷暑が続く東京で、外苑の緑は貴重なオアシスだった。
建国記念文庫の森を「禿げ森」にしたのは、秩父宮ラグビー場を建て替えるためだ。田中は共産党の議員団と共に現地視察に行った。
管理者のJSC(日本スポーツ振興センター)は、建て替えの理由を「老朽化した」「手狭になった」と説明した。実に分かりやすいウソである。

戦後まもない頃、ラグビーを愛する人々が浄財を寄せ、ラガーマンたちが手弁当で築いたラグビーの聖地は、再開発で消えてゆく。=2023年7月、秩父宮ラグビー場 撮影:田中龍作=
新ラグビー場建設のため、神秘の森は伐採されたのだ。都会の貴重な緑はなくなるが、政治家と開発業者の三井不動産は潤う。
秩父宮ラグビー場をめぐってはJSCから提出されていた財産処分申請に8月7日付で文科大臣の認可が下りたのだが、文科省とJSCのサイトに広報はなかった。業者と結託した一部マスコミで報道があっただけだ。
自然破壊を伴う巨大再開発を住民無視で進めてよいのか。専門家と市民と東京都議会の超党派議連は25日、文科省に抗議の申し入れを行う。
~終わり~
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