侵略されながらも自由主義陣営を死守するゼレンスキーを叩いて喜ぶ日本の似非インテリ

神父は自らの手でロシア軍に虐殺された住民のマスグレイブを掘った。=2022年4月、ブチャ 撮影:田中龍作=

「先頭(車両)が来て最後が通過するまで6時間もかかった」。村人は顔をこわばらせながら田中に語ってくれた。

2022年2月24日、戦車や装甲車からなるロシア軍の大車列が地響きを立てながらウクライナに雪崩れ込んできたのである。

ロシア軍に陸上侵攻された地域では殺戮と略奪の嵐が吹き荒れた。

開戦前を含めて9ヵ月間、ウクライナに滞在した田中は、ありとあらゆる町と村を回って人々の話を聞いたが、皆、異口同音に殺戮と略奪の恐怖と凄まじさを語った。

通りの行き止まりまで露軍戦車。ロシアは大軍団で襲撃してきたのである。=2022年4月、ブチャ 撮影:田中龍作=

田中はロシアがクリミア半島に電撃侵攻した2014年から現地で取材を続けてきた。

当時から鉱物資源を産出する土地は、アメリカが戦費のカタとして非常に興味を示していた。「将来的には持って行く」という情報もあった。

アメリカがウクライナの軍人らに「軍事予算を増やせ」とせっついていた現場を目撃したこともある。

この戦争は資源獲得と兵器売却に並々ならぬ意欲を注ぐアメリカと領土的野望に燃えたプーチンが引き起こしたものである。

ゼレンスキーは自らが主演したテレビドラマがヒットしたことで、間違って大統領になった感さえある。とはいえ自国を守るため実力以上に頑張ってきた。

ソ連の圧政に苦しめられロシアとなっても騙され国力を削がれてきたのがウクライナである。

ゼレンスキー大統領。=2022年4月、キーウ地下鉄駅構内 撮影:田中龍作=

28日、ホワイトハウスを訪問した弱小国の大統領が、「プーチンの犬」と揶揄されるトランプ大統領とヴァンス副大統領になぶりものにされた。

ロシアのプロパガンダに感化された反米親露の御仁たちは、ゼレンスキーが凌辱されたことに拍手さえ送った。

ウクライナは日本と同じ自由主義陣営なのである。反米親露の似非インテリたちが、好き勝手にモノが言えるのも、日本が自由主義に属しているからだ。ゼレンスキーはその自由主義陣営を守っているのだ。

侵略した独裁者を讃え、ガザのリゾート地化を目論む帝国主義者を誉めそやす。こうした言説を得意満面で唱える御仁たちの人間性さえ疑う。

田中らフリージャーナリストがもっとしっかりしていたら、日本がこんな歪んだ言論空間にはならなかったかもしれない。そう思うと慙愧に耐えない。

 ~終わり~

  ◇
1月から家探しと引っ越しに追われたため取材が滞りました。間もなく現場に復帰致します。

これまで通り田中龍作を宜しくお願い致します。

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