夜の帳が下り始めた八王子駅前には、蓮舫演説の余韻が残っていた―
蓮舫候補が会場を後にしても、街宣会場に立ち尽くしていた100人近くの人々は一向に動こうとしなかった。
なぜ帰らないのかと聞くと、「これから石丸さんが来るのを待っている」と言う。「早く着いたので聞いていただけ」。
石丸さんとは広島県安芸高田市の石丸伸二元市長(41歳)のことである。
「石丸さんのどこがいいですか?」と中年の女性2人連れに聞いた。
「まっとうな政治家が出てきた」。
「安芸高田で実績がある」。2人は答えた。
蓮舫陣営の街宣車が演説後も車道に止まっていたことから、石丸支持者から「帰れ、帰れ」コールが巻き起こった。怒気を含んだコールだ。
4月にあった衆院東京15区補選で参政党や日本保守党の街宣に来ていた人たちと似た雰囲気をまとっている。
誰かが、「石丸さんはあっちだよ!」と叫ぶと、立ち止まっていた人々が一斉に移動を始めた。中年の女性3人連れがはしゃいで走り出した。
2016年、都民ファーストが世に出た時、女性たちが緑色の服を着て声援を送った。あのはしゃぎ様が蘇る。明らかなポピュリズムである。
ロータリーの反対側に陣取った石丸陣営はテーマカラーの紫色のTシャツを着たボランティアがロープを張って仕切っていた。聴衆の中にも紫のTシャツを着た人たちの姿があった。
演説しなれていないのか。石丸氏の声はあまりよく通らない。それでも―
「経済と行政を知る初めての知事となることをここに宣言します。日本は経済小国になる。目指すは経済強国です。
東京の政治が変われば日本が変わります。どこの既存政党からも支援を受けていない人間が東京都知事になれば日本に激震が走る。日本が変わる」。
大言壮語の割には中味のない石丸氏の演説だった。
~終わり~
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