ガザの友よ、待っていてくれ 田中はすぐに行くから

イスラエル軍の爆撃に遭い即死した女の子は、脳漿(のうしょう)が飛び出していた。=2014年、ガザ 撮影:田中龍作=

 欠航の次は満席。やっと手に入れた航空券の現地着は数日後だ。

 中東がこれほど遠くに感じられたことはない。1日1日がこれほど長く思われたことはない。

 イスラエルのネタニヤフ首相が「孤島にする」と決意を示すガザには友人が2人いる。1人は小学校教師、もう1人はジャーナリストだ。

 教師はずっと前から、ジャーナリストは9日から連絡が付かなくなっている。「ネットの接続が悪い」と話していたが。

 ジャーナリストとは、2千人以上のガザ住民がイスラエル軍に殺された2014年の戦争で、共に死線を潜った仲だ。

 学校が爆撃に遭い、多くの生徒が死亡したことがあった。ふたりで現場に急行した。

 イスラエル軍の攻撃ドローンはけたたましい音を立てて低空飛行する。友人は校庭に溜まった血の海を撮影しようと近づいて行った。

 ドローンの飛行音はさらにけたたましくなった。それでも友人は血の海が撮りたくて堪らないのだろう。前進を続けた。

家財道具を背負い爆撃から逃れる少年。=2014年、ガザ 撮影:田中龍作=

 私はイスラエル軍に携帯電話の番号を伝えていたので、爆撃されはしないだろうと思っていたが、パレスチナ人の彼が心配だ。「withdraw,withdraw=撤退しよう」。私は友人の手を引っ張り後退させた。

 あのまま前進していたら友人も私も爆撃されていただろう。

 エジプトにでも脱出できるのであれば脱出してほしい。だが友人はヨーロッパの某大手通信社の契約記者だ。責任感の強さと同胞への愛情から最後までガザに留まり伝え抜くだろう。

 これまでにパレスチナ人ジャーナリスト7人が死亡した、と地元メディアは伝えている。

 友よ。田中が行くまで待っていてくれ。死ぬな。
 
  ※
読者の皆様。田中は何としてでもパレスチナに入ります。クレジットカードをこすって航空券を購入しました。ホテルの予約もあり、すでに借金まみれです。

ご支援何とぞ御願い申しあげます。

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 ~終わり~

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