米国のルース駐日大使は3日、民主党本部に鳩山由紀夫代表を表敬訪問した。海のものとも山のものともつかぬ「鳩山新政権」の外交姿勢を探るにあたっての挨拶である。
『NYタイムズ紙』に転載された「鳩山論文」に米政権が懸念を示している、と日本の大メディアが報道しているが、誇張だ。「鳩山論文」は、ブッシュ前政権を操り日本をはじめとする世界の経済秩序をムチャクチャにした市場原理主義とグローバリズムを主に批判している。むしろオバマ大統領の路線に重なる。
米政府にとって気がかりなのは、民主党がマニフェストにも掲げている「在日米軍基地のあり方、米軍再編の見直し」だ。
在日米軍はブッシュ前政権下で肥大した軍産複合体の影響を色濃く残す。文民政権ではコントロールできない「関東軍」のような存在である。米軍は8年間も続いたブッシュ政権でモンスター化し、最新兵器開発などのため国家予算以外に300兆円もの資金を飲み込んだ。これが市場原理主義と二人三脚で米経済を破綻に導いたという説もある。
敗戦するとわかっていてもオバマ大統領は、米軍をアフガンから撤退させることができない。政府以上に権力を持ってきた軍産複合体をまだ掌握できていないからだ。
在日米軍基地はアフガンに出撃する部隊の拠点である。パートナーとなる「鳩山新政権」が在日米軍を必要以上に刺激したりすると、オバマ政権の足もとが危うくなる。
シリコンバレーの弁護士でオバマ大統領の選挙戦を資金面で支えてきたルース駐日大使は、大統領の腹心だ。オバマ氏が13日未明の電話会談に続いて間髪を入れずに自らの腹心を鳩山代表に表敬訪問に行かせたのも、今後の在日米軍の扱いを考えてのことだ。
米国は日本を防共の砦とするため資金供与するなどして長らく保守政治家を支えてきた。1990年代後半、旧社会党が事実上崩壊し、自民党と民主党による2大保守政党制の時代に入ると資金供与までして保守政治家を支える必要がなくなった。
次は米国に都合の良い日本の政治家を取り込み徹底的に利用した。代表例は小泉首相(当時)だ。小泉の地元での選挙を支えていたのは、極論すれば在日米軍横須賀基地だ。具体的に言うと基地に出入りする業者、米兵が落とす金で潤う商店街などだ。沖仲士を仕切っていた祖先の小泉組からの港湾利権も脈々と受け継ぐ。小泉の利権とは米軍横須賀基地あってのものだ。見返りはイラク戦争への真っ先駆けての協力だった。
小泉とセットで利用されたのが、米金融資本の意向を反映して郵政民営化を進めた竹中総務相(当時)だ。郵政民営化に反対して総務(郵政)官僚の地位を投げ捨てた稲村公望・中央大学客員教授によれば、AIGをはじめとする米金融資本がスクラムを組んで郵政民営化の圧力をかけた。狙いは300兆円を超える郵貯と簡保の巨額資産だった。
少なくともオバマ政権はブッシュ前政権のように日本を食い物にする必要がない。オバマ氏の選挙を支えたのはブッシュ政権のような金融資本ではなく少額のインターネット個人献金だ。
「小泉・竹中」のように米国に利用されてきたことのない「鳩山首相」は、闇雲に追従しがちだった対米政策をCHANGEする絶好の機会を得ている。
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