開戦から11日目、3月6日。キエフは朝から小雪が舞った。
市民が独立広場前に土のうを積み始めた。独立広場は大統領府、政府庁舎など国家権力中枢の入り口だ。政府庁舎までは50m、大統領府までは100mの距離である。
巨大な戦車止め、撒きビシ、コンクリートバリケードがすでに置かれている。土のうはコンクリートバリケードの上に積まれて行った。
各地でウクライナ市民がロシア軍の戦車の前に立ちはだかったりしているが、キエフ中心部の市民も戦闘態勢に入ったようだ。
市民たちが土のうを積む作業に勤しむ間も空襲警報が鳴った。
機関砲を積んだトヨタ(フォード)のピックアップトラックが、軍の装甲車に先導されながら、田中の目の前を走り去って行った。
ピックアップトラックは黒みがかったカーキ色で塗装されているが、ピカピカの新車だ。
海外の義勇軍がウクライナに入って来ているとの情報があるが、義勇軍が強力な兵器を持たされて入ってきたのか。
田中はピックアップトラックのナンバーに目をやったが間に合わなかった。
機関砲を積んだピックアップが投入されると、格段に戦闘能力が増す。小回りが効いて速い。機関砲は射程距離が長く、破壊力も群を抜く。
各国が雪崩を打つようにしてウクライナに武器援助しているが、機関砲あるいは対空高射砲を積んだピックアップ型トラックが100台単位で入ってくるようなことになれば、戦況は変わる。
~終わり~
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カードをこすりまくっての取材です。↓